政府閉鎖下であらわになったトランプ大統領の冷酷な無関心

ステラ・リスク・マネジメント・サービス(株)
代表取締役、公認会計士、認定与信管理相談士
スティーブン・ギャン

1ヵ月以上も続く厳しい政府閉鎖の中で、数百万人ものアメリカ国民が苦しみを味わっています。給与の未払い、公共サービスの停止、給付金の凍結、そして将来への不安の増大。それにもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領は、この国家的危機をまるで自分が唯一の英雄として登場するテレビドラマのように扱い続けています。さらに悪いことに、彼の行動には明確なパターンが見られます。それは、外国の競合相手を助け、自身を富ませ、そして国民を無視するというものです。

アルゼンチンを助け、アメリカ農家を苦しめる

アメリカの畜産業者や大豆農家が苦境に立たされている中で、トランプがアルゼンチン産牛肉の輸入拡大を認め、同国経済の安定化のために400億ドルの融資を支持したことは、論理的にも忠誠心の面でも理解しがたいことです。
この決定は、アメリカ農業の主要な競合国を強化するだけでなく、中国との関税戦争によってすでに大きな打撃を受けている農家への痛手をさらに深めます。

かつてアメリカ産大豆の最大の輸入国だった中国は、トランプの貿易政策によって生じた供給の空白を埋めるため、現在アルゼンチンから大豆を輸入しています。つまり、アメリカの農家は二重の損失を被っているのです。まず中国市場を失い、次にアメリカ政府がその穴埋めにアルゼンチンを支援するという形で。

  • アルゼンチンに400億ドルの融資:アメリカ農業の競合国への経済支援

  • 牛肉輸入の拡大:価格下落に苦しむアメリカ畜産業者をさらに圧迫

  • 大豆輸出のアルゼンチンへの移行:中国との貿易関係において競合国を強化

これらは、アメリカの労働者のために戦うリーダーの行動ではありません。むしろ国内の安定よりも、国外への見栄を優先する男の選択と言えるでしょう。

貧困層への冷酷な背信

国内においても、トランプは最も弱い立場のアメリカ人に対して冷淡な態度を取ってきました。彼の政権は、政府閉鎖中に補助的栄養支援プログラム(SNAP)の給付延長を拒み、命綱である支援を打ち切っています。フードバンクは逼迫し、わずかながらも重要な月々の給付に頼る労働者家庭は、無期限の待機を強いられています。

その無関心ぶりは驚くべきものです。トランプはアルゼンチン経済のために数百億ドルを投じながら、アメリカの子どもたちが食事に困らないようにはしません。これだけではなく、彼はホワイトハウスに600〜900人を収容できる豪華な新宴会場の建設に数億ドルを費やしています。一方で、何百万人ものアメリカ人が職を失い、家族を養うためにフードバンクに頼っています。

消えた医療保険補助金

数ヵ月前に「大きくて美しい」法案と称して可決された税制・歳出法案は、中間層のアメリカ人にとって何の恩恵にもなりません。その法案の中には、実は医療保険制度改革法(通称オバマケアまたはACA)による保険料補助金の静かな撤廃が隠されていました。11月1日、ACA市場を通じて保険に加入していた数百万人のアメリカ人は、保険料が一夜にして倍増するという現実に直面。

多くの家庭にとって、この補助金は「保険に加入できるか否か」を分ける命綱でした。トランプは政府支出削減を誇っていますが、実際にはその負担を一般市民に押し付け、富裕層には前例のない減税恩恵を与えています。

王族のように暮らす大統領

政府閉鎖が長引き、連邦職員が給与を受け取れず、国立公園が荒廃している中、トランプは贅沢な生活を続けています。彼がマール・ア・ラーゴで過ごす週末は、不謹慎と無関心の象徴と言えるでしょう。報道によれば、閉鎖期間中にも私邸で「グレート・ギャツビー」をテーマにしたハロウィンパーティーを開催し、その後も主要献金者のために豪華な晩餐会を開いています。

このような行事のたびに、多額の税金が警備やスタッフの費用として使われます。つまり、政府職員が食料配給所に並ぶ一方で、国民の税金が大統領の私的パーティーを守るために費やされます。その象徴性はあまりにも明白。彼は大統領職を公的奉仕ではなく、個人的特権とみなしているのです。

在任中に自らを富ませる

当初の利益相反への懸念は、今では公然たる自己利益追求のパターンへと進行しています。トランプは、自身の事業であるホテルやリゾートを公式行事や政治資金集め、外国代表団の宿泊などに利用し続けています。これらはすべて、彼のビジネスに直接収益をもたらします。倫理法および合衆国憲法の「報酬条項(Emoluments Clause)」は、このような私的利益の追求を防ぐために存在します。しかしトランプは、公職と私的帝国を切り離す意志を一切見せていません。

  • 外国の外交官やロビイストがトランプのホテルに宿泊し、ご機嫌取りをしている

  • 政治献金者は、トランプ関連施設で開催されるイベントへの高額参加費を支払い、大統領個人を富ませている

  • 連邦機関がトランプリゾートで税金を支出し、公務と私的利益の境界を曖昧にしている

民主主義の規範の崩壊

こうした私的な乱用にとどまらず、トランプの行動はアメリカ民主主義の基盤そのものを侵食し続けています。彼は独立機関を攻撃し、司法を軽視し、情報機関の分析を無視し、自由報道を「国民の敵」と呼びました。その結果、かつてアメリカ大統領としてはあり得なかった独裁的行動を「普通のこと」として正当化してしまいました。

憲法上の抑制と均衡への無視は偶然ではなく、彼の統治スタイルの核心です。国民を常に対立と混乱の中に置くことで、政権の失策や倫理的疑惑から注意をそらしています。

共感を欠くリーダー

本来、大統領職とは共感、国民の日々の苦労を理解し寄り添う力を求められる職務です。しかし、トランプの政治語彙の中に「共感」という言葉は存在しません。史上最長の政府閉鎖の間、彼が示したのは思いやりではなく軽蔑でした。その発言がそれを示し、政策がそれを裏付け、行動がそれを証明しています。

アメリカ建国の父たちは、大統領職を「公共の徳」を体現するものとして策定しました。しかしトランプのもとでホワイトハウスは、私的ブランドの延長、つまり自己宣伝と利益の看板と化しています。

この政府閉鎖が明らかにしたのはただ一つ。国民への奉仕と自己利益のどちらかを選ぶとき、ドナルド・トランプは常に後者を選ぶということです。

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スティーブン・ギャン:全米与信管理協会(National Association of Credit Management)認定の与信リスク管理コンサルタント

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