2026年:ソーシャル・セキュリティの物価調整率と医療保険料の上昇
Goto Financial Advisory LLC
代表 後藤 浩
今回は、来年の家計にかかわるソーシャル・セキュリティと医療保険のトピックをお届けします。
ソーシャル・セキュリティ:2026年適用の物価調整率は2.8%
ソーシャル・セキュリティの物価調整率は、COLA(Cost-of-Living Adjustment)と呼ばれています。これは、ソーシャル・セキュリティ受給者の実質購買力を維持するために行われる年一回の増額調整です。
COLAは、労働統計局が発表するCPI(消費者物価指数)統計のうち、CPI-W(Consumer Price Index for Urban Wage Earners and Clerical Workers)に基づきます。具体的には当年7-9月のCPI-W指数平均を前年7-9月のCPI-W指数平均で割り、前年比伸び率を算出します。これを翌年の給付額を増額する物価調整率として用います(詳しくは「ソーシャル・セキュリティ:給付額に物価上昇を反映する仕組み」)。
今年は、政府機関閉鎖により9月のCPIが10月末まで発表されず、COLAの確定も例年より遅れました。2025年のCOLAは2.8%となり、2026年1月の給付から適用されます。例えば、2025年の受給額が$1,976(ソーシャル・セキュリティ給付月額平均値)の場合、来年1月から$55.3の増額となります。
上昇が見込まれる医療保険料負担
今年のメディケア Part B標準保険料(2025年:年間所得が単身$106,000未満、夫婦$212,000未満)は月額$185ですが、2026年は$206.5に11.6%上昇すると見込まれています(2025年11月10日時点未確定)。メディケアPart Bに加入している場合、保険料はソーシャル・セキュリティの支給額から控除されます。したがって、さきほどの平均的なソーシャル・セキュリティ受給額の例では、ソーシャル・セキュリティのCOLA調整による$55.3増額のうち、$21.5(見込み)はメディケアPart B保険料の増額で相殺され、正味の受給増額は$33.8となります。
また人事コンサルティング大手のMercerが1,700社超の企業をサーベイしたところ、雇用主が提供する医療保険のコストは2026年に平均6.5%上昇することが見込まれており、2010年以来最大の上場幅になるとのことです。
ACAカバレッジ(Affordable Care Act。通称オバマケア)については、より深刻です。
ACAカバレッジは、雇用主からの医療保険の提供を受けていない人(例えば、自営業者(Self-Employed)やメディケア加入年齢(65歳)前にリタイアした人)が、ACA Marketplaceを通じて加入する保険です。
COVID-19パンデミックを契機としてバイデン政権が保険料補助の拡大措置を講じていましたが、延長について何らかの立法措置がなされない限り、2025年で期限切れとなります。民主党はこの保険料補助の拡大措置の延長を求めており、政府機関閉鎖をめぐる争点の一つとなっていますが、11月10日時点では先行きは不透明です。
加えて、ACAカバレッジの保険料そのものが平均26%(KFFによる推定)上昇することが見込まれています。結果として、保険料上昇と補助拡大の期限切れを合わせると、2026年のACAカバレッジ加入者の正味保険料負担は、2025年の2.1倍(平均)になるとKFFは推定しています。中高年や、所得が貧困と判断される水準(家族構成によって異なる)の400%を超えている場合、実質負担の増加幅はさらに大きい可能性があります(詳しくは「トランプ減税・歳出法に盛り込まれなかったオバマケア保険料補助の延長措置」)。
このように医療コスト上昇などを反映して、2026年は全般的に医療保険料の上昇が見込まれています。今年はオープン・エンロールメント期間中に、医療ニーズや保険料水準などを勘案し、自分に合った保険を慎重に選ぶ必要がありそうです。
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