米国市民権保持者と米国永住権保持者の違い

CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登

参考までに米国市民権取得者と米国永住権保持者(グリーンカード保持者)との違いをいくつか検証してみます。

<法的地位

市民権:米国市民は、米国政府に対して完全な権利を持ちます。選挙権を含む政治的権利や、米国のパスポートを取得する権利があります。

永住権:永住権保持者は、米国に永住する権利を持ちますが、米国市民ではありません。選挙権はなく、政府の一部の福利厚生を享受できない場合があります。

<法的義務

市民権:市民は、税金を含む法的義務を持ち、場合によっては陪審員としての義務もあります。

永住権:永住権保持者も税金を支払う義務がありますが、陪審員になる義務はありません。

<入国管理>

市民権:市民は、米国に対する入国制限がなく、いつでも自由に往来できます。

永住権:永住権保持者は、長期間国外に滞在すると永住権を失う可能性があります。通常、半年以上の海外滞在はリスクがあります。

<権利喪失のリスク>

市民権:市民権は非常に難しく取り消すことができません。また、犯罪者としての行動によって消失することはほとんどありません。

永住権:永住権は、特定の条件や犯罪行為によって取り消されることがあります。 

<家族の移住

市民権:市民は家族を呼び寄せる際、優先順位が高く、移住のプロセスが比較的スムーズです。

永住権:永住権保持者も家族を呼び寄せることができますが、手続きが遅くなる場合があり、優先順位も低いです。

以上のように、米国市民権と米国永住権には多くの違いがあります。市民権はより強力な法的地位を提供し、永住権は米国への永住を許可するが、制限やリスクも伴います。

次に、米国市民権を取得した者と米国の永住権(グリーンカード)保持者では、税法上の扱いに違いがあるのでしょうか。以下に具体的な例を交えて説明します。

<国際的な所得課税の対象>

米国市民も永住権保持者も、全世界で得た所得に対してアメリカ合衆国に納税する義務があります。これは、国内外の所得、給与、投資収益、そして利子など全てが対象となります。特に海外での所得がある場合、一定の条件に該当する場合に限り海外所得税控除(Foreign Earned Income Exclusion)や外国税控除(Foreign Tax Credit)などを利用し、二重課税を避けるための税控除や非課税措置が受けられます。

<国外居住者税制>

米国市民:米国市民は、国外に居住していても、市民権がある限り、アメリカの納税義務を負います。

永住権保持者:永住権保持者が長期間米国外に居住すると、永住権を失う可能性があります。その結果、米国の納税義務も変わる可能性があります。一般的には、永住権保持者が国外に出てから183日以上居住すると米国入国時に永住権を没収される可能性があります。その場合はUSCISにI-407を提出して没収された旨の届けをだし、その提出した日付でForm 8854を提出することにより税法上も非居住者扱いとなります。

<相続税>

米国市民:米国市民は、全世界の財産に対してアメリカの相続税法が適用されます。

永住権保持者:永住権保持者も米国での財産に対して相続税を支払う義務がありますが、国外の財産に対しては対象者の国籍、財産の所在地などで異なる規制が適用されることがあります。このように、米国市民権を持つ者と永住権保持者では税制において重要な違いがある場合があります。特にグローバルな所得課税や国外居住者に関する税法は、納税義務の範囲や条件に大きな影響を与えますので必ず専門家にご相談ください。

以上

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