ビザの種類と使用する確定申告用
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登
確定申告に使用するFormは基本的に通年居住者用のForm 1040と非居住者用のForm 1040NRに分かれます。非居住者用のNRは税法用語のNonresident Alienからきており、直訳すれば非居住外国人のことです。
<非居住外国人>
(1)ビザの種類により実質通年居住者であっても税務上は5年間非居住外国人として扱われる。
F:学生
J:交換訪問者
M:専門学校生
Q:交流訪問者
但し、上記のJやQビザでも教授または研究者の場合、税法上の非居住外国人扱いは2年間に限定されます。
(2)そして年数に制限がない税法上の非居住外国人
A:外交・公用ビザ
G:国際機関職員ビザ
これら以外のビザの場合は実質的滞在テストにより滞在日数が183日を越えなければ非居住外国人として、超えれば居住外国人として、また、赴任年度や帰任年度にはDual Statusという2重ステータスでの申告が必要となります。
非居住外国人が申告しなければならない収入としては実質関連所得と非実質関連所得に分かれます。
<実質関連所得>
米国内での勤務活動又はビジネスから得る給与や自営業所得、不動産賃貸所得等
<非実質関連所得>
米国内で得る不労所得で利子や配当、キャピタルゲイン等
<Form 1040NRの使用例>
非居住外国人が米国での給与や自営業からの事業損益など実質関連所得がある場合
非居住外国人が米国にある不動産売却時に課された10%の源泉徴収の清算
同じく米国にある不動産の賃貸収入から必要経費を控除して所得を申請する場合
利子や配当などに課された源泉徴収税の日米租税条約による還付請求
<説明>
(1)Fビザの学生が学位取得後に実務研修(OPT)を受けた後にH-1Bを所得した場合、同一年度の前半に所得した場合は2重ステータスでの申告となります。Fビザの時は免除されたソーシャルセキュリティとメディケアの社会保険税はH-1B所得と同時に課税対象となります。
(2)AビザやGビザで外国政府公館や国際機関から受け取る給与や手当は非課税で、申告や納税の必要はありません。然し、職務以外の収入、例えば本人またはご家族を問わずパートやアルバイトの収入や投資所得があれば、非居住外国人としての税法が適用されるため、非居住外国人としての確定申告が必要になります。
<例として>
米国に居住するAビザの配偶者が日本の法人から調査費用として報酬を受け取る場合は、自営業所得として非居住外国人としてのNRのフォームを使っての申告が必要となります。但しAビザやGビザの場合は他のビザでの居住者と異なり、自営業税(Self-Employment Tax : 15.3%)は免除されるためSchedule SEの申告は必要ありません。
<例として>
Aさんは日本から米国の大学に研究者としてJ-1ビザで渡米しました。大学からはその研究の報酬を受け取り、W-2も発行されたとします。このようなケースですと以前の提出書類は米国源泉所得のみを申告するForm 1040NRに加えて、 非居住者として米国源泉所得のみを申告するための Form 8843、そして2年間は米国源泉所得があっても租税を免除する日米租税条約第20条を適用するためのForm 8833の添付が必要でした。
その根拠となっていたのが日米租税条約第20条(1)です。
「一方の締約国内(米国)にある大学、学校その他の教育機関において教育又は研究を行うため当該一方の子締約国内(米国)に一時的に滞在する個人であって、他方の締約国(日本)に於いて第4条(1)にいう居住者に引き続き該当するものがその教育又は研究につき所得する報酬については、当該一方の締約国(米国)に到着した日から2年を超えない期間当該一方の締約国(米国)において租税を免除する。(カッコ内の国名は筆者が便宜上挿入)」
ところが2019年11月1日以降はこの第20条の規定が廃止されました。そして源泉徴収されるものに関しては2019年11月1日より、その他の課税対象所得に関しては2020年1月1日より適用されることになりました。
従ってJビザであっても米国源泉所得がある限りはForm 1040NR での申告とForm 8843の添付が必要となります。
<参考:ビザの種類として>
A:外交・公用ビザ
B-1、B-2、又は統合されたB-1/B-2:短期入国対象の商用・観光ビザ
E-1:貿易駐在員ビザ
E-2:投資駐在員ビザ
F:学生ビザ
G:国際機関職員ビザ
H-1B:特殊技能職者用ビザ
H-1B1:自由貿易協定専門家ビザ
H-2A:季節農業労働者用ビザ
H-2B:熟練・非熟練労働者
H-3:研修生
H-4:H-1ビザの同行家族
I:ジャーナリスト、メディア関係者のビザ
J:交換訪問者
L-1:企業内転勤者
L-2:企業内転勤者の同行家族
O:科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツにおける卓越した能力の持ち主、または映画やテレビ番組の製作において卓越した業績を挙げた人ならびに、それらの遂行に必要な補助的な業務を行なう人が対象
P:米国で公演・活動するために渡米する特定のアスリート、芸能人、芸術家および不可欠な補助的業務を行なう人が対象
Q:実務研修、雇用、および訪問者の自国の歴史・文化・伝統の普及を目的とした国際文化交流プログラムへの参加者
参考:https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/
以上
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