米日本国籍の方が米国籍を取得し、改めて日本に帰化する場合
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登
自分の意思をもって米国籍を取得した方、あるいは米国で生まれて日本国籍と米国籍を有する方もいらっしゃると思います。いるいろな国籍喪失事由があるとは思いますが、時が流れ、やはり日本人に戻りたいと思われる方への帰化手続きについて調べてみました。
<1.米国籍取得による日本国籍喪失 >
国籍法11条1項:自己の志望により外国籍を取得すると「取得した時点で自動的に喪失」する決まりがあります。
届出期限:3か月以内(海外在住の場合)
届出先:在外公館(例:在サンフランシスコ総領事館)や本籍地市区町村役場
必要書類:
o 「国籍喪失届」2通(窓口)、宣誓供述書(郵送でも可)
o 米国帰化証明書(原本+和訳)
o 日本旅券(提示又は失効処理)
o 住所証明書(米運転免許証等)
戸籍に反映するまで 1~1.5か月程度掛かるとのことです。
<参考文献>
二重国籍と日本国籍の喪失:
https://rename-consultant.com/gaine_and_loss_of_nationality/loss-of-japanese-nationarity/
在アメリカ合衆国日本国大使館:
https://www.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kokuseki-soushitsu-ridatsu.html
在シカゴ日本国総領事館:
https://www.chicago.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/con_reg_uscitizenship.html
<2. 米国籍離脱(Relinquish U.S. nationality)手続きと期間>
米国籍を離脱するには本人に国籍を離脱する意思があり、かつ米国大使館・領事館にて領事と面談を行う必要があります。
在日米国大使館・領事館での面談は予約制
米国領事の前で二つの書類に署名
o Form DS-4079 Request for Determination of Possible Loss of United States Nationality
o DS-4081 Statement of Understanding Concerning the Consequences and Ramifications of Renunciation or Relinquishing of U.S. Nationality
米国領事に宣誓 し $2,350面談日に納付
Form DS-4079がワシントンDCにある国務省に送付され許可を待つ
米国籍離脱証明書(CLN) 発行まで 4~6か月〜1年程度想定
宣誓日でのIRS Form 8854 を提出しなければなりません。「Covered Expatriate」に認定されれば出国税課税となる可能性があります。
<参考文献>
在日米国大使館と領事館:
https://jp.usembassy.gov/ja/services-ja/citizenship-services-ja/loss-u-s-citizenship-ja/
<3.日本国籍を再取得する方法(再帰化)>
元々日本人で外国籍取得が原因で喪失した方は、在留期間等の条件が緩和された“簡易帰化(国籍法8条1項3号)”が適用されます。
対象例:「日本人として出生→米国籍取得→日本に住所・在留」
必要書類を用意し、住所がある法務局へ申請します。
法務省Q&A等によれば、居住6か月~、能力・生計条件緩和あり
<参考文献>
法務省国籍Q&A:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html#a19
東京法務局:https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/index.html
<4. 必要書類の整理>
法務省「帰化許可申請のてびき」等より;
日本人であったことを示す除籍謄本+国籍喪失事実の記載
米国籍取得証明・米国籍離脱証明書(CLN)
在留資格・住所証明書(住民票/除票、在留カード、パスポートなど)
身分関係証明(出生・婚姻・離婚など)
資産・収入関連書類(雇用証明、源泉徴収票、銀行通帳など)
運転記録証明書
外国語資料には日本語翻訳(翻訳者明記)
CLN取得後は必ず「外国国籍喪失届」(市区町村 or 在外公館)
<参考文献>
東京法務局:https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000001_00891.html
<5.申請手続きの流れと想定期間>
法務局へ事前相談予約(本人出頭必須)
必要書類の収集(約1~4ヶ月)
申請受付・チェック(法務局)
面接(2~3ヶ月後)
本省審査(約6~10ヶ月)
許可決定 → 官報公示 →市区町村で帰化後手続
トータルで1〜1年半程度かかるとのことです。
<参考文献>
行政書士いしなぎ事務所のサイト:https://office-ishinagi.com/ja/2025/06/20/kika-process-guide-2025/
東京法務局では予約制の帰化相談を受けることが出来ます。詳細は下記のサイトを参照してください:https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000001_00887.html
<注意ポイントと補足>
米国籍離脱は不可逆&出国税課税の可能性あり(Form 8854 提出必須)
日本再取得時は「国籍選択宣言」と米国籍離脱の両手続き必要
再帰化には素行・納税・日本語能力が必須(過去5年の納税・保険加入の確認など)
20歳未満は届出、20歳以上は申請という法務省の厳格な区分あり
行政書士への相談や、帰化サポートを利用すると手続き・税務・書類チェックの負担が軽減されます。専門家に確認しながら進めることを強くおすすめします。
参考までに直近3年間(2022~2024年)の許可率の統計データ(法務省など公表資料)は90%超と高水準に安定しており、申請が受理されれば許可される可能性は高いようです。
以上
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