米国永住権の失効と放棄 ― 放棄すべきかどうかの判断材料 ―
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登
国際税務のコンサルをしていて最近一番多い相談の一つが永住権の維持か放棄についてです。米国の永住権は「一度取れば一生有効」というわけではなく、一定の条件で失効(または実質的に無効)になることがあります。また、自分の意思で放棄する手続きも用意されています。それぞれ分かりやすく整理してみました。
(1)グリーンカードの「失効(無効化)」の主な条件
これは厳密には「自動で即失効」というより、永住者の資格を維持していないと判断されるケースです。
1. 長期間アメリカを離れる(最も多いケース)
1年以上の国外滞在 → 再入国時に永住資格を疑われる
6か月以上でも審査が厳しくなる
問題になるポイント: 「アメリカに住む意思があるか?」が重視される
例として
海外で長期就労
家族・住居が海外にある
米国に税申告していない
結果として入国時に「永住権を放棄した」とみなされる可能性が高くなります。
2. アメリカに居住実態がない場合
以下が揃うと危険です。
米国内に住所がない
米国で働いていない
税務申告をしていない
IRSへの確定申告は「居住意思」の重要な証拠となります。
3. 犯罪・移民法違反
重犯罪(drug, fraud, violent crimesなど)
移民詐欺
偽装結婚
これらは強制的に永住権剥奪(removal/deportation)されてしまいます。
4. 帰化申請の虚偽など
グリーンカード取得時の虚偽が発覚
5. 再入国許可(Reentry Permit)なしで長期離脱
2年以上海外滞在 → ほぼアウト
Reentry Permitがあれば最大2年までは比較的安全
(2)グリーンカードの「放棄手続き」
正式にはForm I-407(Record of Abandonment of Lawful Permanent Resident Status)を記入し
グリーンカードを同封してUSCISに送付します。放棄する主な理由として挙げられるのは下記です。
日本に完全帰国する
税務負担を避けたい(全世界所得課税)
他国の永住権・国籍を優先
米国に住む予定がない
放棄のメリット・注意点
<メリット>
米国の税務申告義務(全世界所得)が終了
入国管理のストレスがなくなる
<注意点>
一度放棄すると簡単には戻れない
再取得は「最初からやり直し」
ここでよくある誤解を紹介します。
「カードの有効期限=永住権の期限」ではありません。
カード(10年)は更新制
永住資格は条件付きで継続 される
カードに記載されている有効期限が切れたからといって、永住権が自動的に失効するわけではありません。
次に放棄すべきかどうかの判断基準をパターン別にいくつか纏めてみました。
<ケースA>
放棄するのが合理的だと考えられます。
日本に完全帰国
米国収入なし
税務負担だけ残る
<ケースB>
悩みどころなので、数年維持して様子見するのがよいかと思われます。
今は日本だが将来未定
米国に資産あり
<ケースC>
そのまま慎重に維持することをおすすめします。
米国復帰の可能性あり
子供・仕事・投資で関係継続
最後になりますが、放棄の判断基準材料は最終的にはこの3つに集約できると思われます。
住む意思があるか
税務負担に見合う価値があるか
将来の選択肢を残したいか
上記は一般的な情報をまとめただけのものですので、ご不明な点があれば必ず移民法専門の弁護士にご相談ください。
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