期末監査にスムーズに対応するために、会社が日頃から行っておくべきこと

CDH会計事務所
クライアントサクセスパートナー
中尾 倫子

企業の決算期が近づくと、多くの現場で監査対応への準備が始まります。しかし、監査のために直前になって慌てて書類を整理したり、データの整合性を確認したりするのは、実務担当者にとって大きな負担となります。

期末監査を慌てずにスムーズにクリアし、なおかつ正確な決算を早期に終わらせるためには、監査期間中だけでなく「日頃の日常業務」の中にそのための備えを仕組みとして組み込む必要があります。

本稿では、期末監査での負担を減らし、大きな監査修正が入らないようにするために、日常の実務において意識・実践しておくべきポイントを解説します。

1. 「内部統制の基本となる「承認ルール」と「システム管理」

監査人は、単に個々の数字を見るだけでなく、それを出力する「社内の仕組み(内部統制)」が正しく機能しているかを重要視します。この仕組みでは、例として下記のようなことが重要です。

  • 職務分掌と承認ログの徹底

「口頭での承認」や「後追いでのシステム承認」は、内部統制の不備を指摘される典型的な原因です。稟議や購買・売上のプロセスにおいて、「誰が、いつ、何を承認したか」の証拠(ログ)を必ず残す習慣日常化しておくことで、監査で必要な証拠を提出することが可能になります。

  • 定期的なITアカウントの棚卸し

会計システムや販売管理システムの権限管理も「ITコントロール」の重要要素です。異動や退職をした従業員のアカウントが残ったままであるケースは、監査で必ずチェックされます。四半期に一度など、定期的にアクセス権限を見直すルーティンを持っておくことが有効です。

2. 「主要勘定科目」の証憑(エビデンス)を日常的に紐付ける

監査の本番(実証手続)では、膨大な取引の中からいくつかのサンプルがランダムに選び出され、「決算書の数字」と「実際の書類」が一致しているかを検証されます。この確認作業にて資料をタイムリーに提出することができるよう、日頃から以下の運用を行っておくことが求められます。

  • 関連する一連の書類(エビデンス)を1仕訳ごとに完結させる

監査では、決算書の数字の根拠となる書類が正しく揃っているかが検証されます。例えば一般的な売上取引であれば、主に以下の書類(エビデンス)が確認対象となります。

  • 注文書(または契約書):取引合意の証明

  • 出荷書類(または納品書・検収書):物品移動やサービス提供の証明

  • インボイス(請求書):請求金額の証明。

取引の性質で必要書類は異なりますが、重要なのは証拠資料を共通番号などを用いて一発で検索できるようフォルダで管理することです。書類が各部署にバラバラに保管されていると、サンプル提出を求められただけで資料を集めるのにかなりの時間を要してしまいます。

  • 「締め日」の前後における書類のタイムリーな回収

期末や月末の「期間帰属(カットオフ)」は、監査人が最も厳しく見るポイントの一つです。当月に検収が終わっているのに、現場から検収書や出荷報告書の回収が遅れ、翌月に売上や費用がズレ込むケースが多発します。

例えば、現場部門に対して「経費の領収書や、取引先から届いた請求書は溜め込まず、発生の都度(または毎月第3営業日までに)速やかに提出・システム入力する」というルールを日常のルーティンとして厳格に運用し、当月の取引を漏れなくその月のうちに処理しておくことが求められます。

3. 月次決算プロセスに「社内での増減分析」を組み込む

前年同期比や予算比で大きな変動があった勘定科目については、必ずその背景や理由について質問が入ります。

  • 監査人に聞かれる前に、自分たちで原因を把握しておく

監査人に指摘されてから理由を探すのではなく、毎月の決算を締める段階で、社内であらかじめ「なぜ数字が大きく動いたのか」の要因分析(大口顧客の新規獲得、原材料の高騰など)を行っておくことが極めて重要です。変動原因が事前に分かっていれば、質問に対しても正確かつスムーズに回答でき、期末のやり取りを大幅に効率化できます。

4. 特殊な新規取引は「現地のGAAP」を前提に、親会社と早期に連携する

新ビジネスや大型契約などイレギュラーな事象が発生した際、期末に会計処理を考えると監査で時間がかかってしまったり、連結上及び監査上の修正リスクに繋がります。よって期末を待たずに、日本の親会社と早期に処理方法を共有・連携しておくことが肝要です。

5. まとめ

本来のあるべき正しい業務プロセス、すなわち「日頃からの確実なルール遵守」「日常的な書類整理」「社内での数値分析とタイムリーな親会社連携」を積み重ねておくことがスムーズな監査に繋がります。

決算直前にまとめて行う作業ではなく、日常のルーティンに落とし込むことで、監査対応の労力を大幅に軽減し、結果として経営の健全性及び企業のガバナンス強化を支えることにつながるのです。

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