ソーシャル・セキュリティの財政:積立金の枯渇は2032年と予測
ソーシャル・セキュリティ積立金の評議会は、毎年ソーシャル・セキュリティの財政収支予測を発表しています。2026年版レポートが2026年6月9日付で公表されましたので、その内容を見てみましょう。
2026年版レポートの要点
今年のレポートでも、ソーシャル・セキュリティは引き続き、厳しい財政状況に直面していることが指摘されています。具体的には、
老齢年金・遺族年金用の積立金(Old-Age and Survivors Insurance (OASI) Trust Fund)が枯渇する時期を、2025年レポートより1四半期早く(2024年レポート対比では1年早く)、2032年第4四半期と予測。
積立金がなくなっても、Social Security Tax等の収入で給付(老齢年金・遺族年金)の78%(2025年レポートでは77%)を支払うことができる。
財政問題の原因
ソーシャル・セキュリティは、日本の公的年金と同じように、賦課方式(pay as you go)として設計されています。賦課方式というのは、ある時点の現役世代から徴収する掛金を使って、同じ時点の受給者の給付を支払うというものです。今の現役世代が将来受給者になった時、その給付を払うのはその時点の現役世代ということになります。
ソーシャル・セキュリティの給付が増え続けており、それが財政悪化の要因です。背景としては、ベビーブーマー世代のリタイアメント、平均寿命の伸長、少子化があげられます。1970年代までは10人から15人の現役世代に対して1人の受給者だったのに対して、現在は約3人の現役世代に対して1人の受益者というバランスになっています。問題の構図は、日本の公的年金の問題と同じです。
今年のレポートで積立金枯渇の時期が早期化した要因は、
出生率の見通しの引き下げ(1.90から1.75)
移民労働力流入見通しの引き下げ
昨年の減税・歳出法による税収入見通しの引き下げ
です。
早期に望まれる制度改革
ソーシャル・セキュリティの財政問題を改善する施策については、すでに様々な提案がされています。収入を増やすか、支出を減らす、またはその両方の施策です。
1980年代初頭の財政危機の際には、
ソーシャル・セキュリティ税率の5.4%から6.2%への引き上げ
給付算定方式の引き下げ
標準受給開始年齢(Full Retirement Age)の引き上げ
それまで非課税であったソーシャル・セキュリティを課税対象化
などの施策が行われました。
積立金がなくなっても、税収等で8割弱の給付をまかなえるという事実は重要です。ソーシャル・セキュリティが破産するということは、仕組み的にありえません。とはいえ、積立金が枯渇する直前の対応では、現役世代、リタイア世代双方に急激な変化が生じる可能性があります。それを避けるためには、早めに制度改革に着手することが望まれます。
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