個人申告で見落としやすい州税の落とし穴 ― 駐在員・リモートワーカーが知っておきたいポイント

CDH会計事務所
税務部門マネージャー
柴原 舞

米国で個人所得税というと、多くの方がまず連邦税(Federal Tax)を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、実際の税務相談では、後から問題になりやすいのは州税(State Income Tax)です。特に駐在員やリモートワーカー、出張が多い方、年の途中で州をまたいで異動した方は注意が必要です。なぜなら、州税は「どこに住んでいるか」だけでなく、「どこで働いたか」も重要になるためです。

連邦税の感覚で考えていると、「自分はこの州に住んでいるから、その州だけ申告すればよいだろう」と思ってしまいがちですが、州税のルールは州ごとに異なり、想定外の申告義務や追加納税につながるケースも少なくありません。

州税は「住む州」だけの問題ではない

州税を考える際にまず押さえておきたいのは、「住んでいる州」と「働いている州」が必ずしも同じとは限らないという点です。

例えば、イリノイ州に住みながら他州のオフィスに勤務している、出張で別州に滞在して業務を行っている、リモートワークで勤務先と居住州が異なる、年の途中で別州へ異動したといったケースでは、居住州以外で非居住者申告が必要になることがあります。

近年はリモートワークが一般化したことで、本人は1つの州に住んでいるつもりでも、税務上は複数州との関係が生じるケースが増えています。そのため、「どこに住んでいるか」だけでなく、「実際にどこで仕事をしていたか」を把握しておくことが重要です。

「引っ越したから非居住者」は必ずしも正しくない

州税で最も争点になりやすいテーマの一つがResidency(居住者判定)です。

本人としては、「もう別の州に引っ越した」「海外赴任中だから元の州とは関係ない」と思っていても、それだけで非居住者になるとは限りません。

州は住居の維持状況、滞在日数、家族の居住地、運転免許証、銀行口座などの客観的な事実を総合的に見て判定します。重要なのは本人の認識ではなく、実際の生活実態です。

所得税のない州でも安心とは限らない

テキサス州やフロリダ州など、個人所得税のない州へ移った場合でも安心とは限りません。

例えば、IllinoisからTexasへ1年間転勤し、その後Illinoisへ戻るケースでは、テキサス滞在が一時的と判断されると、引き続きIllinois州の居住者として扱われる可能性があります。

特に駐在員や期間限定の赴任者は、この論点が問題になることが少なくありません。

「本当に住んでいた」証拠を残しておく

所得税のない州では州税申告書による居住証明ができないため、居住実態を示す資料が重要になります。

賃貸契約書、運転免許証、自動車登録、公共料金の利用記録、銀行口座の利用履歴、医療機関や保険に関する記録などは有力な証拠になります。

駐在員の場合は住宅契約が会社名義になっていることもあるため、個人名義の資料も意識的に保管しておくことをおすすめします。

実はPayrollが州税リスクの出発点

州税の問題は確定申告の時期になって初めて発生するわけではありません。多くの場合、その原因はPayroll(給与処理)にあります。

州間異動が給与システムに反映されていない、実際の勤務地と源泉徴収州が異なる、出張やリモート勤務情報が共有されていないといったケースでは、後から修正申告や追加納税が必要になる可能性があります。

州税は「申告で調整するもの」ではなく、「給与処理の段階から管理するもの」と考えることが重要です。

まとめ

州税で押さえておきたいポイントは次の4つです。

  • 州税は「どこに住んでいるか」だけでは決まらない

  • 引っ越しただけで前の州の非居住者になるとは限らない

  • 所得税のない州では居住実態を示す資料が重要

  • Payrollでの設定ミスが後の税務リスクにつながる

駐在員、リモートワーカー、州をまたいで勤務する方は、「どこに住んでいるか」だけでなく「どこで働いたか」も意識することが大切です。早めの確認と記録が、将来の州税トラブルを防ぐ第一歩になります。

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