在米日系企業で見直したい経費不正リスクと管理体制
CDH会計事務所
クライアントサクセスパートナー
中尾 倫子
「不正」と聞くと、大企業で発生する巨額な横領や粉飾を想像するかもしれません。しかし、実際には日々の経費精算や法人カードの利用など、身近な業務の中にも不正や不適切な処理が入り込む余地があります。
特に在米日系企業では、日本本社から離れた環境で少人数のスタッフが業務を行っているケースも多く、十分なチェック機能が働きにくいことがあります。そのため、担当者への信頼だけに依存するのではなく、会社として確認しやすい仕組みを整えておくことが大切です。では具体的に、どのような経費不正のリスクに注意すべきなのでしょうか。まずは、実務でよく見受けられる事例から確認していきましょう。
よくある経費不正の例
〈私的利用の経費申請〉:業務とは関係のない個人的な支出を会社経費として処理するケースです。
個人的な飲食を接待費として申請する
私用品を業務用品として購入する
個人旅行分のホテル代や交通費を出張費に含める
一件あたりの金額が小さくても、同様の処理が継続すれば大きな損失につながります。そのため、経費申請時には「支出の目的・参加者・利用日・業務との関連性」を確実に確認できる状態にしておくことが不可欠です。
〈法人カードの不適切利用〉:便利な反面、利用ルールや確認プロセスが曖昧になりやすい項目です。
利用目的が不明確な支出
領収書が提出されていない取引
承認されていない高額購入
通常の業務内容と比べて不自然な支出
法人カードの明細は毎月レビューし、領収書や請求書と突合する仕組みを作ることが大切です。
〈不適切な経費精算〉:金額の改ざんや実際には存在しない費用の申請などです。
実際より高い金額で申請する
実際には発生していない費用を申請する
同じ領収書を複数回使用する
業務に関係しない支出を出張費や接待費に含める
出張費については、事前申請・旅費精算書・領収書をセットで管理することで、後からの確認をスムーズに保つことができます。
このようなリスクを防ぐためには、個人のモラルだけに頼るのではなく、組織としての「管理体制」を整えることが欠かせません。では、米国子会社ではどのような点に気をつけて体制を構築すべきでしょうか。
在米日系企業で注意すべきポイント
米国子会社では、少人数体制ゆえに一人の担当者が請求書処理、支払、記帳など複数の業務を兼務しがちです。だからこそ、「申請・承認・支払・記録」の役割を可能な範囲で分けることが重要です。
そのため、現実的には兼務せざるを得ない場合であっても、次のような基本的な仕組みを意識して管理の精度を高めることが重要です。
経費申請者と承認者を分ける(可能な範囲での役割分担)
法人カード明細を定期的に確認する
高額または通常と異なる取引をレビューする
領収書や請求書などの証憑をしっかりと保管する
承認ルールを社内で明確にしておく
内部統制は「疑うため」ではなく「守るため」
内部統制というと、社員を疑う仕組みと思われることがあります。しかし、本来の目的は、会社と社員の双方を守ることです。
明確なルールや確認プロセスがあれば、社員は安心して経費を申請でき、承認者も一貫した基準で判断できます。また、経費精算ソフトウェアやアプリを活用すれば、レシートの写真保存、承認フロー、法人カード明細との照合、過去データの検索なども効率化できます。
紙の精算書や領収書だけで管理している場合は、デジタルツールを取り入れることで、経理担当者や承認者の負担軽減にもつながります。
最後に
海外子会社では、本社から日常業務が見えにくいからこそ、経費管理や承認プロセスを定期的に見直すことが大切です。
まずは「申請者と承認者が分かれているか」「カード明細や証憑がきちんと残っているか」を確認することから始めてみましょう。経費管理を整えることは、不正防止だけでなく、より健全な会社運営へとつながります。
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