アメリカには職場での健康診断はないの?
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子
日本では、「労働安全衛生法」に基づき、一般企業や役所の従業員は健康診断を受けなくてはいけません。これは、「従業員の健康確保と維持」の為に、法律で定められています。
従業員はその企業や役所で働き始める時、その後は一年に一度、健康診断を受ける必要があります。もちろん、深夜労働や健康に害になる可能性のある仕事に就く従業員、海外に派遣される従業員には別の規定もあります。
会社の規模にかかわらず、この規定は有効であり、健康診断の費用は雇用主が負担する必要があります。
(参考文献:「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために」厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
また、日本では、「学校健康安全法」で保育園・幼稚園から大学生までの児童・生徒・学生は皆、「毎学年定期的」に、新学年が始まる「4月1日から6月30日」の間に健康診断を受けなくてはいけない、と定められています。
学校に在学中の健康診断の費用は、国公立の学校の場合は国や地方自治体が、私立の学校の場合には学校法人が負担することになっており、児童・生徒・学生や保護者が負担する必要はありません。
(参考文献:「「学校健康安全法」e-GOV 法令検索)
アメリカでは、連邦法で雇用主が従業員に健康診断を受けさせる必要がある、という規定はありません。(人体に危険が及ぶ職業などの一部の例外を除く。)
学校に限って言えば、自治体や学校が健康診断を一律に提供することはありませんが、少なくも1-2年に一度、自分で選んだ医療機関で、学校の規定の健康診断を受け、予防接種を済ませ、その証明書を通学する学校に提出する必要はあります。ただし、費用は個人負担です。余談ですが、宗教上の理由などで規定の予防接種を受けないことも、宗教の自由の一環として認められています。もちろん、その場合には学校にその許可を求める書類を提出する必要があります。
アメリカでは、従業員に健康診断を受けさせる義務はありません。ただし、従業員を200名以上かかえる米国の企業は、ほぼ90%の企業は、従業員に健康診断などを提供している、という調査があります。(参考文献:”Trends in Workplace Wellness Programs and Evolving Federal Standard”, KFF, June 9, 2020 )
たとえ、雇用主が従業員に健康診断を受けさせる義務がなくても、雇用主は職場の安全を守る必要があります。従業員が病気になると、生産性も下がりますし、雇用主が提供する医療保険を使用すると、雇用主の保険の掛け金が上がる、など経済的にも雇用主に負担がかかります。
従業員がたとえ数名しかいない雇用主であっても、従業員の健康を守り、ひいては保険の費用増大を防ぐため、一年に一度、従業員に健康診断を受けさせることをお勧めします。
漠然と従業員に健康診断を受けさせる、と言っても、従業員が行きたがらない、というお話も聞きます。具体的に、以下のような方法を取ってはいかがでしょうか?
フルタイムで直接雇用の従業員は「一年に一度は健康診断を受けに行く必要がある」というポリシーを作る。
雇用主が提供している健康保険で規定している健康診断を受けた場合には(男性は通常の健康診断、女性はそれに加え、婦人科健康診断も)、健康保険の個人負担分を雇用主が負担し、従業員に返金する。
健康診断に行く時間は、有給休暇とする。
返金と有給休暇を取得するために、健康診断を受けた従業員は雇用主に領収書や簡単な医療機関からの証明を提出させる。ただし、健康診断の詳細については、プライバシーにかかわるので、提出させないようにする。
弊社は、人材紹介・人材派遣だけではなく、健康診断のポリシー作成なども含め、人材コンサルティングも行っております。ご質問などございましたら、ぜひご連絡ください。
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