衆316議席の衝撃 〜 日本の政治はどこへ向かうのか 〜

エス・アイ・エム
代表コンサルタント(認定心理カウンセラー)
佐藤 義規

今回の衆院選は、単なる政権選択では終わりませんでした。

自民党が戦後初となる「単独で3分の2超」を獲得し、316議席という圧倒的な数字を叩き出したからです(※1)。この結果は、日本の政治構造そのものを大きく変える可能性を秘めています。では、この選挙で何が起き、なぜこのような結果になったのでしょうか。そして、私たちはこれから何を見つめるべきなのでしょうか。

■ 自民党が“単独で3分の2超”を獲得した意味

まず押さえておきたいのは、今回の316議席が持つ重さです。

  • 261議席(絶対安定多数)

    • 委員会の委員長ポストを独占し、委員の過半数も確保できる

  • 310議席(衆院の3分の2)

    • 参院で否決された法案を衆院で再可決できる

    • 憲法改正の国民投票の発議が可能

つまり、自民党は単独で国政を大きく動かせる力(3分の2を越える316議席)を手にしたことになります(※2)。これは戦後初の状況であり、政治のバランスが大きく傾いた瞬間でした。

■ 失望と怒り──専門家たちが発した警鐘

この結果に対して、学者や専門家からは強い懸念が示されています。

田中優子氏(法政大学名誉教授・元総長)は、「非核中堅国家の連携がカナダを中心に提唱されている。アジアの非核中堅国家連携こそ、これからの日本を守る仕組みだ。しかし高市政権は日本を大国と勘違いし、核武装まで考える可能性がある。サナエファンにはそれぐらい知っていてほしい。」と警告し(※3)、 三木義一氏(青学大名誉教授)は、「与党に投票した方々にしっかり政権を支え・監視してもらおう。 あとから「騙された」などと言って逃げるのはご勘弁。投票者としての責任をしっかりお取り下さい。」と怒りをあらわにしています(※4)。なぜここまで強い反応が出ているのでしょうか。 その背景には、今回の選挙が“従来の選挙”とは異なる性質を帯びていたことがあります。

■ 若者の低投票率と「投票のパラドックス」
自民党の大勝については、様々な分析がされていますが、その中でも気になったのは若年層の投票率の低さです(※5)。 これは、社会心理学博士で新潟青陵大学大学院教授の碓井真史氏が指摘する「投票のパラドックス」(※6)「自分一人が投票しても結果は変わらない」という心理が強く働いた結果とも言えます。
しかし、単に「若者が政治に無関心」という話ではありません。それ以上に投票行動そのものが変質しているのです。

■ 選挙が“推し活”になる時代──SNSが変えた投票行動

SNSの普及により、選挙はこれまで以上に“感情”で動くようになりました。

  • 政策よりも「推し」

  • 候補者をアイドルのように応援

  • SNSでの盛り上がりが投票行動に直結

こうした現象は「日本型ポピュリズム」の進化とも言えます。SNS(スマホ)が選挙を劇的に変えたと言えるでしょう。今回の選挙では「サナエ推し」「サナ活」という言葉が象徴的でした。

■ 選挙の物語化:アンダードッグ効果とバンドワゴン効果

近年の地方選挙では、劣勢や不利な状況にある人や集団に対し、同情や共感から応援したくなる『アンダードッグ効果』が顕著でした。

  • 兵庫県知事選

    • 斎藤氏を追い込んだメディアや百条委員会・県議会に対して寡黙に戦う斎藤氏に仲間(立花孝志氏)が応援に駆け付ける

  • 前橋市長選

    • メディアと山本群馬県知事や経済界などの強敵に追い詰められた小川氏は“悲劇のヒロイン”

ドラゴンボール、ONE PIECE、魔法少女まどか☆マギカやヴァイオレット・エヴァーガーデン、暁のヨナ、などといったライトノベルやアニメのような“物語”を連想させる構図が、SNSで共感と関心を呼び、当初の予想が覆ったのです。

今回の衆院選では逆に、 「勝ち馬に乗りたい」という『バンドワゴン効果』が強く働きました。
中道改革連合という“敵役”の登場は、結果的に初の女性首相という高市氏の象徴性を際立たせる形になりました。敵は5爺(通信規格の5Gにかけた)という黒っぽいスーツのオジサンの集団ですから、政策的なことを抜きにすれば、SNSで数多く投稿され、「人気がある」「支持率が高い」とマスコミがさかんに持ち上げる女性初の首相に投票する人が増えるのは明らかでしょう。(※7)

■ 選挙がマーケティング化する未来

今回の選挙戦略を見ると、選挙が「マーケティング化」していることがよくわかります。

  • 戦後最短の超短期決戦

  • 党首討論の回避によるダメージの回避(※8)

  • SNSでのイメージ戦略

  • 有権者=消費者という構図

選挙は、スマホで商品を選ぶような“一過性のイベント”になりつつあります。SNSで拡散された“正解”に投票する流れは、今後さらに強まるでしょう。

■ 権力集中と国会軽視の兆候
形こそ違え、これは第二次世界大戦へと突き進んだナチスドイツにおける熱狂とよく似ているように思えます。2013年7月29日に当時の麻生太郎副総理兼財務・金融相が東京都内の講演で憲法改正について、「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうか」(※9)と発言していますが、まさにそうした事態が起こりかねない状況ができあがっているように思えてなりません。自民党の鈴木俊一幹事長は、 「謙虚に野党の意見に耳を傾ける」と語っています(※10)。
しかし一方で、 「野党質問はそんなに要らない」と発言する政権幹部もいます(※11)。すでに国会軽視の姿勢が見え始めていると言わざるを得ません。

■ 結論:これは杞憂ではない ー 自民党改憲案を読むべき理由

「3分の2を取っても、好き勝手にはできないだろう」そう考えるのは危険です。歴史を振り返れば、ワイマール憲法は“いつの間にか”ナチス憲法に変わっていったのです。今回の選挙結果は、日本が同じ道を歩む可能性を示唆しているようにも見えます。まずは、自民党の改憲案を一度読んでみてください(※12)。そこには、決して杞憂とは言えない内容が書かれています。この内容を知って、それでも自分は自民党に投票するという人は果たしてどれだけいるのでしょう?

※1:衆議院選挙2026 開票結果(NHK)

※2:自民圧勝、単独で3分の2議席を獲得 衆院選(BBC)

※3:サナエファンのかたへ 田中優子・法政大学名誉教授・元総長(東京新聞)

※4:投票した若者たちの目線 三木義一(青山学院大名誉教授)(東京新聞)

※5:18・19歳投票率は43% 衆院選、全体を13ポイント下回る(日本経済新聞)
※6:『1票じゃ変わらない』は本当? 若者と投票のパラドックスを社会心理学で考える(Yahoo! News エキスパートトピ)
※7:「推し活」選挙が溶かした政党政治 「戦後民主主義」に引導渡す(日本経済新聞)
※8:NHK討論番組欠席「遊説のキャンセルだけは勘弁してくれと言われ」高市総理が釈明(ABEMA Times)
※9:世間を騒がせた問題発言 暴言・放言・迷言特集(時事ドットコム)

※10:自民・鈴木幹事長 議席数3分の2確保の場合も「数を頼みに進めない」(毎日新聞)

※11:政権幹部「野党質問、そんなに要らない」 「高市1強」国会にも攻勢(朝日新聞)

※12:自民党の改憲草案で憲法はどう変わる?(憲法改正.com)

記事の無断転載を禁じます。

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