担当者が変わっても止まらない経理フローの作り方 ― 米国日系企業のための実務ポイント ―

CDH会計事務所
クライアントサクセスパートナー
中尾 倫子

Form 1042という言葉を聞いたことはありませんか?米国で事業を行う日系企業では、日本の親会社や関連会社との間で配当・利息・ロイヤルティなどのク経理担当者が急に不在になり、業務が思うように進まなくなった―そんなご相談を受けることは少なくありません。経理業務は特定の担当者に依存しやすく、担当者交代をきっかけに混乱が生じるケースも多く見られます。

今月は、担当者が変わっても経理業務を滞らせないための実務的なポイントを具体例とともにご紹介します。

1️⃣ 業務フローの視覚化

日次・月次処理の手順を整理:帳簿の締め、入金確認、支払い、経費精算などの手順をチェックリスト化し、「誰が何をするか」を明確にすることで、担当者が変わってもチェックリスト業務を回すことができます。

担当者の役割を明確化:Excelで担当者ごとの業務一覧を作成し、引き継ぎ漏れや重複を防止します。特に月末や四半期末など繁忙期の役割はあらかじめ整理しておくと安心です。

業務の帰属(社内対応か社外か)の整理:各業務について「社内で完結している業務」と「外部に依頼している業務」を区別し文書化します。例えば、日常記帳は社内対応、給与計算や税務申告は外部専門家に依頼している、など業務の帰属を整理します。

2️⃣ 情報の整理と共有

オンラインアカウント情報の整理:会計ソフト、米国連邦税務署(IRS: Internal Revenue Service)の米国連邦税の電子納税システム(EFTPS)、州税ポータルなど税務関連のログイン情報は安全に管理し、少なくとも2名以上の責任者が把握できる体制を整えておくことが望ましいです。

申告・予定納税スケジュールの可視化:月次、四半期、年次の提出期限をチーム全体で把握し、カレンダーやExcelで一覧化します。例えば、Form 1099提出や四半期税申告など、繁忙期の期限も前もって把握しておくことが重要です。

税務関連の通知対応の履歴整理:IRSや州税から届く通知や質問、修正依頼などの対応記録を残しておくことで、担当者が変わっても過去の対応状況を確認でき、漏れや重複を防止することができます。

外注化できる業務

上記1で整理した業務の帰属を踏まえ、業務内容によっては、社内で抱え続けるよりも外注した方が合理的なケースも少なくありません。例えば、

給与計算や四半期税務申告サポート:負担の大きい業務を外部に依頼することで、効率化を図ることができます。

月次・年次決算のレビューや仕訳チェック:社内で記帳しても、外部確認を加えることで精度を高めることができます。

法人税以外の税務関連申告書:Sales TaxやProperty Taxなど、社内処理可能でも繁忙期は外注することで効率的に進めることができます。

Form 1099作成:12月決算企業では1月に作業が集中するため、外注することでミスを防ぎ、業務負担を軽減することができます。

整理の効果

上記を見直すことにより、担当者が変わっても止まらない経理フローを作ることができるのみならず、下記のような効果があります。

  • 経理業務が効率化し、日常の負担を軽減することができます。

  • 税務・監査対応が迅速になり、提出遅れやミスのリスクを低減することができます。

  • 担当者交代時の混乱を防ぎ、社内の安定を保つことができます。

  • 経営者やマネジメント層に安心感を提供し、会社全体の信頼性向上につなげることができます。

まずは、業務フローと情報の棚卸しから始めましょう。担当者交代時の混乱を防ぐために、特別な仕組みを一度に作る必要はありません。まずは、上記1と2の中から、できることを1つずつ整理していくだけでも、トラブルを防ぐ体制を作る一歩となります。

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