究極の選択(Would You Rather)

エス・アイ・エム
代表コンサルタント(認定心理カウンセラー)
佐藤 義規

究極の選択(Would You Rather)は、コミュニケーションを取る際に有効な方法です。特に恋愛に関するものは面白く、老若男女・国籍を問わず、相手との距離を一気に縮める会話術と言えるでしょう。

例えば、

  • 顔はタイプだけれど性格が悪い人と、性格は良いけれど顔がタイプではない人、どちらを選ぶ?

  • 愛情とお金、どちらが大切?

  • お寿司と焼肉、この先どちらかしか食べられないとしたら?

  • スカイダイビングとバンジージャンプ、罰ゲームでやるならどちら?

  • 好きな食べ物は最初に食べる?それとも最後に取っておく?

といったものです。酒席でも盛り上がる楽しい話題でしょう。

しかし、現実の人生や将来を左右する場面で究極の選択を迫られた場合、話はまったく別です。苦しい選択となることが多いように思います。

今、日本国民は究極の選択を「しつつある」というより、すでに選択を余儀なくされている状況にあるのではないでしょうか。

2025年10月21日、高市早苗氏が第104代内閣総理大臣に指名され、日本憲政史上初の女性総理が誕生しました(※1)。女性初の首相誕生は歴史的に大きな意味があるでしょう。しかし、その政治姿勢は自民党の古い保守強硬派の思想に近く、安倍晋三元首相の政治路線の「継承者」を自任しているものの、安倍元首相に見られたハト派的政策を織り交ぜるリアリスト的側面(※2)は見られません。むしろ、安倍元首相が実現できなかった軍事大国化路線を強硬に進めようとしているように見えます(※3)。こうした政治状況の中で、日本国民は「戦前回帰」か「戦後民主主義の深化」かという選択を迫られることになるでしょう(※4)。

高市首相は「台湾有事」をめぐり「存立危機事態になりうる」と発言し、批判があっても訂正せず、中国を「仮想敵国」と位置づけることで党内右派や一部国民の支持を得ています。さらに「国家情報局」「対外情報庁」の創設まで示唆しており、すでに成立している「特定秘密保護法」「共謀罪」と合わせれば、戦前・戦中に言論や思想を弾圧した治安維持法と同等の国民監視体制を作り出しかねません。

支持率が50%を超えていることから、「国民が望んで選択している」というロジックが一部メディアやSNSで横行していますが、本当にそうでしょうか。

高市政権下で初の国政選挙となった第51回衆議院選挙では、自民党が歴史的大勝を収め、単独で3分の2以上の議席を獲得しました(※5)。しかし、コラム記事にもあるように、巨額の動画広告による「推し活」「サナ活」の大量拡散が大きな要因であったことは間違いないでしょう。その巨額広告が現在問題となっています(※6)。高市氏は関与を否定していますが、国民の前で真偽を明らかにする責任があるにもかかわらず、「秘書を信じる」とだけ述べて終わらせようとしている姿勢は、確信犯的と言わざるを得ません。

前回のブログ記事「ナチスの手口に学ぶ」(※6)でも触れましたが、当時のドイツでは、ナチス党がラジオの普及を利用したプロパガンダと捏造・隠蔽によって真実を覆い隠し、国民を扇動しました。今回の大量動画広告や「推し活」「サナ活」は、媒体がラジオからSNSに変わっただけで、まさにナチスの手口そのものです。「大量の匿名動画による攻撃」や「アルゴリズムをハックした拡散」は、デジタル・ファシズムの典型的戦術です(※7)。

SNSでは「オールドメディアは信用できない」としてSNS情報を主な情報源とする人が増えているようですが、私に言わせれば、それこそ「冠履転倒」であり愚かな行為です。

新聞やテレビといったオールドメディアには、情報の正確性を担保し、誤報や偏向報道があれば訂正・是正する社会的・法的責任があります。公共の利益に奉仕する「第四の権力」として、その影響力の大きさに比例した説明責任が求められています。受け手である国民は、それをメディアに要求できます。

しかしSNSには、そうした責任はありません。発信者が誰なのかすら不明確なことも多い。そうした情報源をオールドメディア以上に重視する愚かさは明らかです。

また、高市氏を「イメージだけ」で評価することも愚かさの表れでしょう。女性初の総理という事実と、政治的能力や人柄はまったく別の問題です。少なくとも、経歴詐称疑惑(※や本人の著作(※から受ける印象、政策論、国会での議論の姿勢(切り取られたものではなく実際のやり取り)、外交の場での立ち振る舞いなどを見る限り、政治家としての資質には大きな疑問を感じざるを得ません。

さらに、高市氏が自身のホームページで「内閣総理大臣としての実績」として挙げているものも、よく見ると本来の目的から外れていたり、非効率であったり、石破前首相の実績を自らのものに置き換えたようなものが多く見られます。

高市首相は「日本国」という言葉を頻繁に用いますが、本来「国民のため」であるべきものを「国のため」と言い換えることで、「国のためには国民の犠牲は当然」という思想が見え隠れします。「国を二分する」という発言も首相としては不適切で、本来は「国民を一つにする」べき立場です。また、国民のために働くため憲法に縛られる「行政府の長」である内閣総理大臣が「憲法改正」を口にすること自体、おかしいでしょう。

こうした視点で見れば、現在の自民党の憲法改正案が「国民より国(公)を優先する」内容になっているのも当然と言えます。高市政権を支持する人々は、こうした事実を知らないか、あるいは見ようとしないのでしょう。

私は、彼らと同じ船に乗って究極の選択を迫られることだけは、決して望みません。

※1:保守強硬派の高市早苗氏、日本初の女性首相に選出(CNN)

※2:[最長政権の軌跡 安倍晋三 回顧録]<6>(読売新聞)

※3:NYタイムズが掲載した追悼記事 米紙が振り返る安倍晋三の功罪(クーリエ・ジャポン)

※4︰<本音のコラム>戦後改革と戦前回帰 鎌田慧(東京新聞)

※5︰「高市自民」なぜ圧勝? 巨額の動画広告に「推し活」「サナ活」拡散(時事通信)https://www.jiji.com/jc/v8?id=202602com01

※6:ナチスの手口に学ぶ あなたはいつから“支配される側”になったのか(The Stellar Journal)https://bit.ly/4drTP2D

※7:「大量の匿名動画による攻撃」は、デジタル・ファシズムの典型的な戦術(石田英敬東京大学名誉教授)

※8:「嘘の経歴で、しゃあしゃあとテレビにまで出れる人」芥川賞作家 痛烈批判した高市首相の“疑惑”が再燃(女性自身

※9︰30歳のバースディ : その朝、おんなの何かが変わる(1992年高市早苗著 国立国会図書館)

記事の無断転載を禁じます。

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