アメリカの職場における発言の許容度
Pacific Dreams, Inc.
President & CEO
Ken Sakai(酒井 謙吉)
今年1月にトランプ第二期政権が発足して以来、予想をはるかに上回るスピードでアメリカ国内の政治的分断と社会の二極化が進んだというのは、アメリカに住む誰しもが抱くところの実直なる所感ではないかと申し上げられます。職場においては、DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムの大幅な後退、トランスジェンダーを含む性的マイノリティへの除外、(合法的ステータスをも含む)移民従業員への排他的な締め付けなど、社内における従業員同士の信頼感はただでさえ損なわれ、チームの連帯感やモラールには傷がつき、生産性にも支障をきたす、こういった悪影響の波は遅かれ早かれ、多くの組織が少なからぬ経験に至ることはほぼ避けられない状態になりつつあります。
フラストレーションのたまった従業員の中には、声を荒げて辛辣で無礼な言動を職場で平気で放つ者も現れてまいります。アメリカ憲法の第一修正案には言論の自由が認められてはいるのでありますが、時と場所と方法とを選ぶのはもちろんのこと、法的に守られている言動と法的には何ら守られていない言動とに明確に線引きをすることが欠かせなくなります。そこで、今回の記事ではどのような発言であれば許容され、法的な保護も取りつけられるのか、逆に一定の線を越えてしまった発言や法的に違法と見なされる言動とは何かをあらめて検証してみたいと思います。
まず法的な枠組みとして申し上げますと、従業員は職場における安全性や衛生問題、そして労働条件等について発言したり、議論することは従業員の権利としてOSHA(Occupational Safety and Health Act; 職業安全衛生法)およびNLRA(National Labor Relations Act; 全米労働関係法)という連邦法の下で認められています。職場での安全性に懸念を抱く従業員からの報告が会社にあったときに、会社はその従業員が不利益になるようないかなる報復的措置を取ることも、OSHAの法律では固く禁止されています。一方、業務妨害を起こしたり、差別的またはハラスメント的な言動を同僚や部下に加えることは、法的に認められていないどころか、連邦公民権法第七章(The Civil Rights Act Title VII)を含む、連邦雇用機会均等法(EEO: Equal Employment Opportunity Laws)に反する違法行為として従業員からの公的機関へのクレーム(申し立て)や訴訟の対象になります。
ここで申し上げました法律は、いずれも連邦法でありますから、アメリカ国内であれば州や場所は一切問われずどの職場にあっても適用されます。それらの法律は、トランプ政権になったからと言って、法律が施行停止になったり、適用が縮小化されたり、公平性が踏みにじられたりすることは今のところ何も起こっていません。これら法律に基づいて、会社では従業員ハンドブックや会社ポリシーが書面で作成されているはずです。会社の書面に明記されている会社ルールに反する行為はすべてが違反行為とみなされ、発言を許容することは出来ません。そして会社は発言の許容度を超える従業員の言動に対しては、公正で一貫した対応措置を迅速に取ることが求められています。
分断を煽り、職場の緊張を否応なく高める現政権下にあっては、職場でいま最も必要とされているものは、礼節であり、お互いへの尊重や尊敬であり、社内での誠実なコミュニケーションではないかと思います。あらためて、会社は許容されない言動は職場では決して認められないこと、許容を超える言動に対して会社は懲戒手順ポリシーに基づく一貫した措置を取ること、そうしたメッセージを会社およびマネジメントは臆せず従業員に伝えていく必要があります。時と場所と方法を選ばない言論の自由というのは職場では到底認めることは出来ないことを会社は行動を伴ったメッセージで示すことによって、この不透明で先行きの読めない不安な時代を乗り越えることのできる健全で強靭な企業カルチャーを醸成していくことができるものと考えます。
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