ヨーグルトの隠された真実 ~ヨーグルトの健康影響を決める9つのポイント~

機能性医学の学会The Institute for Functional Medicine
認定Practitioner
松本 明子

ヨーグルトは、紀元前5000年頃に東地中海からバルカン半島、中央アジアにかけて発祥したとされる。最初は、家畜化された羊や牛、山羊の乳が、偶然に乳酸菌で自然発酵することで生まれた。

この偶然発見された酸味のある発酵乳は、保存性と栄養価が高く、各地の気候や文化に合わせて多様に発展していった。乳糖もある程度分解され、ヨーグルトに入っている乳酸菌が人の腸内でも乳糖を分解するため、乳糖不耐症の人でも食べられる食品であった。保存食としても薬や儀式の道具としても用いられた。

20世紀初頭、ロシアの生物学者イリヤ・メチニコフが、ブルガリアの伝統的ヨーグルトとチョウジュとの関係に注目し、ヨーグルトに含まれる乳酸菌、特に Lactobacillus bulgaricus が長寿や腸内環境の改善に関係していると発表し、これが世界的な関心を呼び起こした。日本では、1970年の大阪万博で、ブルガリアヨーグルトが紹介されて以降、一般家庭にも普及した。

ヨーグルトは是か非か?

このように、何千年も前から人類に愛されてきたヨーグルト。でも、現代のスーパーに並ぶヨーグルトは、果たして“同じもの”なのだろうか?「ヨーグルトってどう?」と聞かれるたびに、私はこう答える。「それは、あなたの腸だけが知っている」。

ヨーグルトの健康影響を決める9つのポイント

ヨーグルトと健康への影響は以下のような観点から考えてみるとよい

  1. 乳の種類と質(牛の種類、羊、ヤギ、生育環境など)

  2. 飼育環境と抗生剤の問題

  3. 発酵前の殺菌方法の問題

  4. 発酵の度合いと乳糖の問題

  5. 発酵後の殺菌の有無と菌の活性

  6. 添加された物や甘味料の影響

  7. カルシウム過剰の問題

  8. ヨーグルトを作る細菌(プロバイオティクス)と腸内環境

  9. 食物過敏と遅延型症状

乳の種類と質(牛の種類、羊、ヤギなど)

乳は87%が水分で、3%がタンパク質、(脂が4%、炭水化物が5%)である。タンパク質はカゼインが80%でホエイが20%である。

ホエイはヨーグルトにある上澄みに含まれる。だからあれを捨ててはもったいない限りである。

さて、カゼインにはざっくりと2種類ある。

  • 消化しやすいA2型βカセインと、消化しにくく、半消化の状態でモルヒネ様物質に変わるA1型βカセインである。

  • A1型のは、腸粘膜を刺激して炎症を起こしやすい。また、脳を刺激して全身に痛みを引き起こす原因になるとも考えられている。

A2型を持つのが山羊、羊、ラクダ、牛の原種(ジャージー、ブシャ、水牛、ブラウンスイス種など)の乳は比較的消化しやすいA2型βカゼインを含むため、腸への負担が少ないとされている。一方、アメリカや日本の乳牛の圧倒的多数のホルシュタイン(黒地に白斑)の作るのがA1型のカセインである。ホルシュタインは、ドイツ・オランダで18世紀から19世紀にかけて、効率よく乳を出す種として、アメリカでさらに改良されてきた。日本では戦後、アメリカから輸入したホルシュタインが急速に普及し、日本の乳牛の99%となっている。

実は、ヨーグルトが「健康食品」であったころの牛はホルシュタインではないのである。また、いまだに乳製品が健康長寿と関連しているとみられる地域(イタリア南部やギリシャ、ブルガリア等)も、ホルシュタインが増えてきているものの、まだ、主体ではないのである。

飼育環境と抗生剤の問題

狭い牛舎で遺伝子組み換え飼料を食べて育った牛と、広々とした草原で自然に育った牛では、健康状態も乳の質も大きく異なる。狭い牛舎では感染が広がりやすく、抗生剤が使用される可能性が放牧よりも高い(以前は、発育のために抗生剤が使用されていたが、現在はアメリカでは事実上、禁止されている)。乳の大部分は血液と同じ成分であり、抗生剤を投与しつつ搾乳した場合は、抗生剤の種類によっては乳汁中に出る。また、女性ホルモンを投与されている牛もいる。それも乳汁中に含まれる可能性もある。なお、家畜への抗生剤の使用は抗生剤耐性菌の原因にもなり、ヒトの健康にも影響を及ぼす可能性が高い。

筆者は1年間、ブルガリアの隣国のルーマニアに住んだ経験があるが、山での放牧が当たり前で、茶色の牛が点在するのを見かけたことがある。農家のおじさんが毎朝、搾りたての生乳を大きなミルク缶に入れて売りに来ていたのをガラス瓶を持って買いに行っていたが、おそらくこうした乳で出来たヨーグルトは健康食品なのだろうと思う。

発酵前の殺菌方法の問題

アメリカや日本では流通にのせるためには生乳を殺菌するところから始まる。私が子供のころ(1970年代)は牛乳瓶のふたにべっとりと乳脂肪がついていたが、最近は見かけない。これは殺菌方法の違いである。昨今流行りの高温殺菌では長持ちなのだが、その殺菌過程で脂肪の粒を細かく砕き(ホモジナイズ)、水分と混ぜ合わせる。その工程で、乳脂肪が参加しやすくなり、慢性炎症や心血管疾患につながるという考え方、ホモジナイズにより、タンパク質が変性し、消化しにくくなり、腸に悪影響を与える、という考え方もある。

発酵の度合いと乳糖の問題

通常の発酵ではヨーグルトにも乳糖がある程度残存しているが、特に発酵が不十分な場合、乳糖がたくさん残り、乳糖不耐症の人では下痢や腹痛の原因になることがある。

発酵後の殺菌の有無と菌の活性

通常は生きたプロバイオティクスが入っているが、たまに発酵後に殺菌されて、生きた菌が入っていない場合がある。死菌でも有用とされるが、生菌の方が腸内で一時的に活躍する可能性がある。例えば、ヒトの腸内で乳糖を分解してくれ、乳糖不耐症の人でも乳糖による問題がおきにくくなる可能性がある。死菌ではそれが望めない。

添加された物や甘味料の影響

砂糖や人工甘味料、合成香料などが加えられているヨーグルトは、腸内環境に悪影響を及ぼす可能性がある。もし、健康のためにヨーグルトを食べるのなら、少なくともそうした製品は論外と言えるだろう。

カルシウム過剰の問題

乳製品のカルシウムは過剰になりやすく、脳を興奮させ、骨を溶かしたり動脈硬化を促進する可能性がある。「骨に乳製品」とは、実は大きな誤解なのである。乳製品を摂るならカルシウムの暴走を抑えるマグネシウムとのバランスが重要である。乳製品はカルシウムサプリメントと同じくらい、カルシウムが多いのである。なお、カルシウムサプリメントは心血管リスクを高めることが知られている。

ここまでは主に乳製品自体の問題である。

そしてここからが短いが本題である。

プロバイオティクス(ヨーグルトを作る細菌)と腸内環境

乳酸菌は多くの人にとって有益である。腸内環境の改善、免疫機能の調節、乳糖分解の補助、精神の安定化などが報告されている。しかし、全ての発酵食品に共通して言えることだが、過敏性腸症候群の人などでは、本来、無菌である小腸に細菌が増えており、そこにプロバイオティクスが加わるとさらに小腸内で細菌が増え、ヨーグルトを食べることで逆に不調を引き起こすことがある。まさに、「あなたの腸だけが知っている」のである。

食物過敏と遅延型症状

乳に対する食物過敏がある場合、腸管に炎症を起こす。2-3日後に頭痛、鼻炎、月経痛、関節痛、皮膚炎などの症状が出ることがある。即時型ではないため、自分では気づきにくい。

A1型βカセインの分解によってできるカソモルフィンは、おそらく多くの人に腸の炎症を引き起こす原因となるが、乳に対する食物過敏がある場合は、羊乳でもヤギ乳でも腸管炎症が起きる場合がある。そして、食物過敏と腸管炎症(=腸内環境の悪化)こそがメタボ関連疾患、ガン、アレルギー、自己免疫性疾患などの様々な病気の根本原因の一つである。つまり、たとえ、質が大変に良いとしても、ヨーグルトがあなたに良いかどうか、これも「あなたの腸だけが知っている」のである。

それでも食べていい人は?

実は、腸のバリアは3層構造となっている。腸内細菌の層、粘液の層、そして腸粘膜細胞の層である。この3つのバリアがしっかりしている人は、たまに悪いものを食べても何も問題が起きない。集団食中毒で、症状に差があるのはこうした腸内のバリアがどれだけしっかりしているかと関係があるのである。あなたがそれを食べてもいいかどうか、それも「あなたの腸だけが知っている」のである。

地域と時代による乳製品の価値

植物が不足する地域や時代(モンゴルの砂漠、昔の冬のスイスなど、)では、あるいは今のブルガリアや田舎のギリシャでも質の良い乳製品が人類に貢献している。

しかし、現代のアメリカや日本でストレスの多い生活を送る私たちが、質の悪い一般的な市販のヨーグルトを食べるのは、多くの人にとって「健康のため」には論外であり、質の良いヨーグルトであっても注意が必要である。

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乳製品に関しては、昔のビデオですが、これもご覧ください。

https://youtu.be/oV1TAy5-QHM

https://youtu.be/96-2JLk9UBo

https://youtu.be/WFk55BcDwMQ

https://youtu.be/FypXg5gm6do

自己紹介

「健康こそ人生の質を左右する」

人生の目的は幸せになることでしょう。では、幸せになるためには何が大切でしょうか?これは千差万別でしょうが、どの人でも「健康」、「お金」、「愛」は上位に来るでしょう。健康であれば文無しでも働くことはできるでしょうし、他者に優しくもできます。つまり愛ある関係を築くこともできるでしょう。逆に、病気だと、治療にお金がかかり、心の余裕を失って、人間関係もぎくしゃくし、つまり愛ある関係を築くのが難しく、幸せから遠ざかってしまいます。だって、機嫌の悪い人のこと、好きな人はなかなかいませんから(いつも機嫌が悪いのは健康でないサインの一つです)。だからこそ、いつも「予防は治療に勝る」と思っています。健康こそが人生の質を左右することは、ちょっと風邪を引いただけでも実感しますよね。

私は、日本での消化器内科医として20年弱働いた後、現在はアメリカでアメリカ最大の機能性医学の学会The Institute for Functional Medicineの認定Practitionerとして、多国籍の人に食事・生活指導をしています。

機能性医学とは病気の根本原因を見つけ出し、体のバランスを整えることで健康を取り戻す医学です。薬に頼る前に、「なぜその不調が起きたのか」を探り、食事、睡眠、ストレス、腸内環境、栄養バランスといった日常の要素を丁寧に調える。

これは、言い換えれば「究極の予防医学であり、21世紀型の抗老化医学」でもあります。また、多くの病気が腸内環境を起源としています。

人の体の仕組みは、顔と同じように一人ひとり異なります。あの人にいい健康法も自分に良いかどうかは別問題です。自分にとって過去に良かった健康法も、今の自分に良いかどうか、これまた疑問です。不調のある人はもちろん、今は元気だけれど将来への備えをしたい人も、 「自分の体を理解すること」から始めてほしいと思います。

Heal the Gut!

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20分間の無料相談も行っています。お気軽にご連絡ください。詳細な質問、必要なら腸内環境検査、食物過敏検査等も自宅で行えます。

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