「カロリーゼロ」の罠と、甘いものに依存してしまう本当の理由
機能性医学の学会The Institute for Functional Medicine
認定Practitioner
松本 明子
アメリカで買い物をしていると、カートに大量にDiet Cokeを入れている人をしばしば見かけます。太った人もそうでない人も。「いや、それ、却って太るんだけど」、と声をかけたくなるのを、要らぬお世話だなと、グッと我慢します。
「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」や「天然由来」なんて言葉を聞くと、減量や健康の強い味方のように感じてしまいますよね。しかし、近年の研究や報告を見渡すと、これらの甘い言葉の裏には、私たちが知らなかった落とし穴が隠されていることがわかってきています。
まず、アスパルテームやアセスルファムKなどのカロリーゼロの人工甘味料は、確かにカロリーはありませんが、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを変えてしまったり、代謝のリズムを狂わせたりして、かえって肥満や生活習慣病のリスクを高める可能性が指摘されています。これはある種の腸内細菌が糖尿病の予防などの役割を果たしているからです。
また、天然にも存在するからと優等生扱いされてきたキシリトールについても、最近の報告で心血管系リスクとの関連が取り沙汰されています。
さらに、同じく天然由来として人気の高いステビアも性ホルモンなど影響を与える可能性が示唆されています。自然の植物をそのままかじるのとは違い、高濃度に精製された甘味料を大量に摂り続けることは、体内の微細な調節機能に余計な負担をかけてしまうのです。
また、私たちの体は「甘い味」を感知しただけでも、血糖値を下げるインスリンを分泌させることがあります。カロリーがなかろうと、甘味を感じるだけで体内では「糖が入ってくる」と身構えるスイッチが入ってしまうのです。これは人の体にとって好ましいことではありません。
しかし、ここで本当に目を向けるべきなのは、「甘いものをどう選ぶか」以前に、「なぜこれほどまでに甘いものを大量に食べたくなるのか」という体の状態そのものです。
エネルギー不足による血糖値の乱高下や、タンパク質・ミネラルの不足、あるいは睡眠不足やストレスが重なると、脳の食欲中枢が異常をきたし、手っ取り早くエネルギーや快楽を得ようとして甘いものへの欲求が暴走します。「甘いものが無性に欲しくなる体の状態」こそが最大の問題なのです。
だからこそ、無理な我慢や“ゼロ甘味料”でごまかすのではなく、普段の食事でしっかり栄養を満たし、血糖値を安定させることが先決です。
そこを改善すれば、甘いものは我慢の対象ではなくなります。まずは食物繊維が豊富な野菜や、しっかりとしたタンパク質をよく噛んで味わった上で、少量の砂糖やはちみつなど本物の甘みが入ったものを「たまに、適度に、純粋に楽しむ」。
異常な状態から抜け出し、自分で選べる体を取り戻すこと。それが、本当の意味で心も体も健やかに甘いものと付き合っていく秘訣なのです。
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