日系企業が留意すべき「企業向けマッチングアプリ」の米国でのリス
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子
現在日本にいる息子たちに彼女ができたそうです。で、どこで知り合ったのかと思ったら、「マッチングアプリ」という答えが返ってきました。私が若いころとは違い、現在はパートナーを恋愛マッチングアプリで探す、というのは、社内恋愛より普通のことだそうです。
個人で恋愛マッチングアプリを使うだけではなく、現在、日本国内では、若手社員の福利厚生の一環として企業グループ内での恋愛マッチングアプリを導入する動きが広がっています 。少子化や社内恋愛の減少といった社会的背景、多様な働き方による交流機会の減少などを背景に、従業員のプライベートな満足度向上を通じたエンゲージメント強化や生産性向上が期待されています 。( 参考文献:「伊藤忠・NTTなど1100社超 企業向け恋愛マッチングアプリ広がる」日経ビジネス、2024年4月19日)
しかし、このサービスを米国法人の社員にも適用範囲を広げる場合、日本とは比較にならないほどの高い法的リスクを伴います 。福利厚生として企業が提供したマッチングアプリ内でセクシャルハラスメントが発生した場合、それが勤務時間外のインターネット上でのやり取りであったとしても、企業が使用者責任および監督責任を問われる可能性は極めて高いです 。
アメリカでは、セクシャルハラスメントに対する法規制が非常に厳格であり、特に「ミートゥー(#MeToo)運動」以降、社会的な意識が極めて高まっています 。ハラスメントが発生した場合、たとえわずかな過失であっても、福利厚生を提供した企業は巨額の損害賠償を命じられるリスクがあります 。
さらに、アメリカの訴訟制度にはディスカバリー(証拠開示)制度があります 。一度訴訟が起こると、企業はアプリ内の通信記録など、従業員のプライベートな情報も含めた広範囲な証拠開示を求められる可能性があります 。これにより、訴訟リスクが高まるだけでなく、企業の信用失墜にもつながりかねません 。
駐在員も含め、米国で働いている従業員に企業向けマッチングアプリを福利厚生として提供する場合には、リスクを最小化するため、以下の措置を徹底する必要があります 。
公私分離のための厳格な運用ルールの策定と周知徹底
ハラスメント防止のための全従業員向けトレーニング(セクハラ防止トレーニング)の義務付け
アプリ利用におけるハラスメント防止のための具体的な措置の講義
たとえ雇用主が親切心で行ったことであっても、受け取る人にとってはセクハラ、と思えることも実際に起こります。また、どんなに高度な従業員の集団であれ、不適切な行為を行う人は残念ながら一定数います。従業員に福利厚生を提供する場合にも、会社を守るルール作りやトレーニングの実施をお忘れなく。
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