日本の常識が通用しない?アメリカの試用期間
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子
お客様から、「まずは派遣社員として採用し、問題がなければ正社員にしたい(Temp to Perm)」というご相談を受けることがあります。派遣社員として働いてもらい、その人が正社員として適しているかを見極めたい、というお気持ちはよく理解できます。
日本では、新しく社員を採用した場合に「試用期間」を設けるのが一般的ですが、アメリカでは事情が少し異なります。
かつては、アメリカの民間企業でも新規雇用者に対して 試用期間(Probation Period) を設ける企業が多くありました。しかし最近では、むしろ試用期間を設けない企業が増えています。その背景には、アメリカの雇用制度である 「At-Will Employment(随意雇用)」 の原則があります。
この原則のもとでは、雇用主と従業員の双方が、理由の有無に関わらず、いつでも雇用関係を終了させることができます(2026年現在、モンタナ州を除く)。そのため、試用期間を設定すると、かえって次のような誤解を招く可能性があります。
「試用期間が終了したので、これからは雇用が保証される」
このように受け取られてしまうと、試用期間終了後に解雇した場合、従業員から
「不当解雇(Wrongful Termination)」 を主張されるリスクが高まることがあります。
もちろん雇用主としては、
「もし従業員が会社に合わなかったらどうするのか」
「仕事ができなかった場合に困る」
という不安を感じるのは当然です。
実際、アメリカでも At-Will Employment とはいえ、解雇の際には通常、
パフォーマンスに関する記録
警告や改善指導
客観的な評価資料
などを残しておくことが望ましく、簡単に解雇できるわけではありません。また、その間の給与や福利厚生のコストも発生します。
ただし、試用期間を設けなくても、福利厚生(Benefits)の開始時期を遅らせることは一般的に行われています。
福利厚生の多くは法律で義務付けられているものではなく、雇用主が提供する制度です。そのため、
「入社後90日以降に福利厚生を開始する」
というような運用は、多くの企業で行われています。
このような制度であれば、仮に早い段階で雇用関係を終了することになっても、会社の負担をある程度抑えることができます。
また、もう一つの方法として、
最初は契約社員として雇用し、数か月後に正社員へ転換する
という方法もあります。
ただ、IT業界では、専門職やプロフェッショナル職でも比較的一般的ですが、通常の民間企業では、エントリーレベルの職種を除き、専門職やマネジメント職ではあまり一般的とは言えません。
いずれにしても、試用期間の有無に関わらず、新しい社員を採用する際には、
「まずは数か月のお試し」
という感覚ではなく、
「この人を長く会社のメンバーとして迎える」
という前提で採用することが重要です。
採用と解雇には大きなコストが伴います。
例えば、
採用活動にかかる費用
PCなどの設備準備
トレーニングコスト
給与や福利厚生
などです。
また、もしポジションがなくなったとして レイオフ(Layoff) を行う場合には、失業保険(Unemployment Insurance)の負担の一部が雇用主側に発生します。
さらに、新しく入社した従業員の中には、前職を辞めて転職してきた人もいます。採用後すぐに解雇することは、その人の人生に大きな影響を与える可能性もあります。
だからこそ、アメリカでは
「採用の段階で、しっかり人を見極めること」
が何よりも重要だと言われています。
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