ドナルド・トランプを心理分析すると
エス・アイ・エム
代表コンサルタント(認定心理カウンセラー)
佐藤 義規
前回、『トランピズムは「終わりの始まり」』(※1)でトランプ大統領の異色性は彼自身のキャラクターとトランピズムと呼ばれるその政治手法であると述べました。彼のキャラクターと政治手法は、彼自身が「パーソナリティ障害」、それも「自己愛性パーソナリティ障害」と「反社会性パーソナリティ障害」、「演技性パーソナリティ障害」の複合型であることから来ていると個人的に分析しています。
アメリカ精神医学会が定めている『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)』(※2)におけるB群(感情的で移り気なタイプ)に該当すると考えます。正式な診断や分析結果ではなく、あくまで個人の見解としてご理解ください。
また、誤解のないように言っておきますが、「パーソナリティ障害」=「病気や疾患である」ということではありません。「パーソナリティ障害」は、「人格障害」や「性格障害」などと呼ばれ、障害者差別の対象となった歴史がありますが、あくまで「パーソナリティ障害」は平均とは違っていることを示しているだけです。「パーソナリティ障害」であっても著しい苦痛や機能障害をもたらしていないものは、正常なパーソナリティとして扱われます。「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」作成に関わった Allen J. Frances(※3)によれば、すべての「精神疾患の診断はより厳格にすべきであり、正常なパーソナリティを病気とみなすべきではない」とも主張しており、診断には慎重さが求められます。
また、アメリカ精神医学会には「ゴールドウォーター・ルール(Goldwater Rule)」という規範(※4)があり、公人を直接診察せずに精神疾患の診断を行うことを倫理的に禁じています。そのため、アメリカの精神分析医や心理学者は、「ナルシズム傾向」、「誇大的自我」、「共感の欠如」といった特徴を指摘するにとどめ、あくまで仮説的・観察的な分析に終始しています。
ドナルド・トランプ氏はノーベル平和賞受賞に非常にこだわっていました。(※5)自分が重要であるという誇大な感覚を持つ、偉大であることにこだわる、常に尊敬されることを求める、という点は「自己愛性パーソナリティ障害」の大きな特徴です。また、彼の自分の行動を正当化する、個人的な権力や満足を得るために他人をコントロールしたり、攻撃したりする、個人的な利益や快楽のために繰り返し嘘をつく、被害者のことを愚か者または無力だと責める、他者への共感が欠如している、罪悪感に欠けるといった点は、まさに「反社会性パーソナリティ障害」の特徴と一致します。
3つめの「演技性パーソナリティ障害」の6つの特徴(①注目を集めるための外見へのこだわり、②他者への誘惑的で挑発的な態度、③感情の不安定さ、④虚言癖、⑤自己中心性、⑥他者や環境からの影響を受けやすいこと)のうち、メディアで報じられる過激な発言、ソーシャルメディアでの頻繁な投稿といった注目を集めるための行動や大げさな表現などが「演技性パーソナリティ障害」の「特徴」に合致していると言えます。しかし、一部メディアはトランプ氏は「演技性パーソナリティ障害」の基準を満たさないとする専門家の意見を取り上げており(※6)、この部分は議論の余地がありそうです。
一方で、トランプ氏が再選する前に200人以上の医療専門家がトランプ氏の精神状態について警告する公開書簡に署名し、「悪性ナルシシズム」であると指摘していました。(※7)「悪性ナルシシズム」とは、自己愛性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、攻撃性、サディズムなどが複合した症候群のことです。自己の利益のために他者を支配・操作し、共感性が欠如しているのが特徴です。他者を感情的・物理的に傷つけ、家族や社会に壊滅的な結果をもたらすことがあるとされています。再選後も彼がこうした特徴を変わらず持ち続けているのは明らかでしょう。
仮に彼が「自己愛性パーソナリティ障害」と「反社会性パーソナリティ障害」、「演技性パーソナリティ障害」の複合型、もしくは「悪性ナルシシズム」の可能性が非常に高いとしても、現実的に彼は世界最高の権力者であり、その影響力の大きさは計り知れません。今後も世界中がトランプ氏の一挙手一投足に注目せざるを得ないでしょう。
日本の元総理大臣が現職当時、「日本国憲法を(詳らかに)読んだことがない」(本人の弁)にも関わらず、憲法を変えるべきだと言って物議を醸したことがありました。その際、SNS上で「自分が乗っているバスを”猿”が運転していることがわかったら、真っ先にバスを止めて”猿”からハンドルを奪うべき」というような内容の投稿が炎上騒ぎとなりました。首相を猿に例えたのが不敬だということだったのでしょうが、例え現役の首相であっても、とても適格者と思えない人物に日本国民の安全安心とその未来に関わる憲法について”訳知り顔”で語って欲しくはないというのが正直な感想です。
さて、アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏は”猿”ではないでしょうが、果たしてその地位に見合った適格者なのでしょうか?10年後のアメリカ、そして世界がどうなっているのか、大きな危惧を抱かざるを得ません。
※1:トランピズムは「終わりの始まり」(The Stellar Journal)
※2:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5-TR):(アメリカ精神医学会)
※3:アレン・J.フランセス(Allen J. Frances):(日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン)
※4:Goldwater Rule(American Psychiatric Association:アメリカ精神医学会)
※5:ロシアでさえ「ノーベル賞を欲しがるトランプ」は「ネタ」にされている(現代ビジネス)
※6:I helped write the manual for diagnosing mental illness. Donald Trump doesn’t meet the criteria(STAT News)
※7:200人の医療専門家がトランプ氏について衝撃的な警告を発する(ベトナムプロモーションプラットフォーム)
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