日本(人)の安心・安全を脅かす高市政権
エス・アイ・エム
代表コンサルタント(認定心理カウンセラー)
佐藤 義規
高市首相による「存立危機事態」発言が引き起こした日中関係の悪化(※1)は、1か月以上経過した現在も収束の兆しが見えません。さらに、中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射という、対応を誤れば武力衝突に発展しかねない事案まで発生しています(※2)。ここでどちらの国の主張が正しいかを論じても意味はありません。問題は、高市首相の答弁そのものが本来不要な発言であり(※3)、過去の政府方針から逸脱しているにもかかわらず「従来の政府見解を変更したものではない」(※4)と強弁し、発言を撤回しないことで事態を悪化させ続けている点にあります。
発言のきっかけとなった台湾からも批判が上がり(※5)、日中関係を悪化させただけでなく、東アジア全体の緊張を高め、台湾や米国との関係にも悪影響を及ぼしかねない状況です。日本国民の安全・安心という政府の最重要課題に向き合わず、さらには日本経済にまで悪影響を招いたことを踏まえると、総理大臣としての資質が十分であると言えるでしょうか。むしろ日本の国益を損なっていると考えられます。
高市早苗という政治家は、言葉の選び方や発言内容、そして撤回を拒む姿勢(※6)から見ても、きわめて危うい存在です。2016年の総務大臣時代には「電波停止」発言(※7)でも大きな物議を醸しました。
高市氏は「日本の安全保障」という言葉を頻繁に用いますが、安全保障とは何でしょうか。ブリタニカ国際大百科事典によれば、「安全保障」とは「人間とその集団が自己の安全を確保し、生命と財産を守ること。特に国際政治において、他国から自国が攻撃・侵略される危険を遠ざけ、攻撃を受けた場合にはあらゆる手段で排除すること」とされています。一般的には国家安全保障の意味で使われますが、この点には注意が必要です。国民の立場からすれば生命や財産を守る目的は理解できます。しかし「国」という概念が、国民の集合体ではなく、現状の政治体制・権力・利権・形骸化した制度そのものに置き換えられる危険があります。その結果、国民の権利や財産、家族よりも「国」が優先され、「国」のために犠牲を強いられることが起こり得ます。歴史が示す通りです。ゆえに為政者が「国」や「国家」という言葉を用いる際には、その意味に十分な注意が求められます。
国民の主食であるコメをめぐる問題でも、前石破政権が実施した備蓄米の低価格放出や輸出拡大・増産といった政策を、「需要に応じた生産」という名目の減産方針へと180度転換しました。結果としてコメ価格は下落せず、むしろ2週連続で上昇し過去最高値を更新しています(※8)。国民の主食が安全保障上の重大なリスクとなりつつあると言えるでしょう。さらに農水大臣は「お米券」という税金の無駄遣いともいえる愚策を進めようとしています(※9)。見方によってはJA全農への利益誘導とも受け取れる状況です(※10)。全国に1万か所を超えるこども食堂が存在するほど困窮する子どもが増えているにもかかわらず、それを放置したまま減産を行い、80数兆円を米国に送る政権――これが言う「日本の安全保障」とは何を守ることを指すのでしょうか。
年末の風物詩である「流行語大賞」には、高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれました。本人は「賛否両論いただいた」(※11)と述べましたが、一方で労働時間規制の緩和検討を指示し、時間外労働の罰則付き上限規制が緩められるのではないかという懸念が広がっていることには触れていません。
先日、米誌 Forbes が選ぶ「世界で最もパワフルな女性」の3位に高市首相が選出されました(※12)。支持者は大喜びですが、これは世界有数の経済大国で初の女性首相が誕生したことが理由であり、政策実績が評価されたわけではありません。今後、その真価が問われるでしょう。一方で、高市政権の財政政策については、英ロイター通信が「自滅的」「自民党への支持を損なうリスクがある」と指摘し、英誌 エコノミスト は「時代遅れ」、米ブルームバーグは「資本逃避が生じかねない」、英紙 テレグラフ は「偽サッチャー」と評しています(※13)。こうした評価にも目を向ける必要があります。
憲政史上初の女性首相として高い支持率でスタートした高市政権ですが、問題はその具体的政策や発言内容について、客観的に理解したうえで支持している国民が必ずしも多くない点です。「初の女性首相」という象徴性や、高市氏の笑顔や関西弁による親しみやすい印象、歯切れの良い物言いが「高市早苗フィーバー」とも言える熱狂を生み、高支持率を形成しているように見えます。
しかし高市氏は女性であっても、女性が暮らしやすい社会づくりに資する政策を積極的に進めているようには見えません。選択的夫婦別姓制度の導入は、女性の社会進出や多様な家族形態の尊重、国際的整合性の確保に資する重要な一歩ですが、彼女は一貫して慎重または反対の立場を取っています。ワークライフバランスの改善や、政府が掲げてきた「2020年代に最低賃金全国平均1500円」といった「新しい資本主義」の看板を降ろしたことも、国民生活への視点の欠如を感じさせます。
SNS上では、高市氏への批判に対し反射的に反論したり、発言者を攻撃したりする行為が横行しています。これは安倍政権以降顕著となった現象ですが、近年さらに加速している印象です。マスコミ報道を「デマ」「捏造」と断じ、真偽不明の情報を鵜呑みにする。さらには、デマに踊らされ、自分と異なる意見に対して攻撃を繰り返す――こうした愚かな行動が当たり前のように行われています。ポピュリズムの問題点である「感情論に走りやすく、排他的・扇動的になる」という特徴が、至るところで見られる現状に強い危機感を覚えます。
高市氏は女性であっても、この国の総理大臣でありリーダーです。国民の生活に対して大きな責任を負っており、私たち国民はその一挙手一投足を注視する必要があります。盲目的にならず、感情や先入観を排して、発言内容や事実、結果を丁寧に確認し、判断していかなければなりません。イメージやSNS上の不確かな情報を基に判断するべきではありません。政治はアイドルの人気投票ではなく、その結果が私たちの生活や未来に直結するものです。一人ひとりがその自覚を持たなければ、この国に明るい未来は訪れないでしょう。
政治家の発言や政策は、国民の生命・財産・生活に直結します。だからこそ、私たちは冷静に事実を確認し、感情や先入観に左右されずに判断する姿勢を持たなければなりません。高市首相の発言や政策をめぐる一連の問題は、単なる一政治家の資質にとどまらず、日本の民主主義の成熟度を問うものでもあります。
国民が主体的に政治を監視し、批判し、必要に応じて修正を求めること――それこそが「安全保障」の本質であり、真に国を守ることにつながります。為政者の言葉や行動を鵜呑みにせず、国民一人ひとりが責任ある判断を積み重ねていくことが、未来を切り拓く唯一の道です。
※1:【日中関係】「国民の憤りを引き起こした」中国側“高市首相発言の撤回改めて要求”(日テレNEWS)
https://www.youtube.com/watch?v=x3hRe-DVBGA
※2:レーダー照射問題で中国メディア「中国が示した鉄の証拠は再び日本の嘘を打ち破った(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2341828?display=1
※3:台湾問題めぐる高市首相答弁、事前資料に記載なし 応答要領が判明(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11CQ30R11C25A2000000/
※4:存立危機事態の高市首相答弁「政府見解変更せず」 答弁書を決定(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA251AA0V21C25A1000000/
※5:〈台湾からも批判の声〉完全に詰んだ高市首相「存立危機事態」発言…(集英社オンライン)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed9aeb96a644c12c12bca6f8c00b21a63f2aafdc
※6:「存立危機」の他にも「奈良のシカ」「マウント取れる服」…高市首相の言葉選びと撤回しない姿勢に危うさ(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/451959
※7:高市早苗総務大臣の「放送法違反による電波停止命令を是認する発言」に抗議し、その撤回を求めると共に、政府に対し報道・表現の自由への干渉・介入を行わないよう求める会長声明(東京弁護士会)
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-425.html
※8:【気になるデータ】お米の値段 スーパーでのコメの平均価格 2025年(時事ドットコム)
https://www.jiji.com/jc/tokushu?id=retail_rice_price_reiwa&g=eco
※9:おこめ券は非効率な政策なのか、識者「減反政策との両立はマッチポンプ」 予算の約24%が手数料や経費に消える自治体も(ABCニュース)
https://www.youtube.com/watch?v=2gWSJTg1Mk8
※10:「おこめ券」でJAを救済したいだけ…金4000億円で"史上最高値のコメ"を買わせる農水大臣とJAの癒着ぶり(PRESIDENT Online)
https://president.jp/articles/-/105996
※11:高市首相「働いて発言、賛否両論いただいた」 流行語大賞で挨拶(毎日新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA013X10R01C25A2000000/
※12:Women’s Political Power Faced A Fractured Year In 2025(Forbes)
※13:「偽サッチャー」「自滅的」「時代遅れ」 高市首相の経済政策を海外メディアが酷評(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/455440
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