不動産投資による資産形成とその税申告
CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登
米国に在住されている方は値上がりを期待されて不動産への投資をされている方も多いかと思います。賃貸物件を購入した場合の申告方法、そしてその買い替え時に適用されてキャピタルゲイン税を繰り延べできる1031エクスチェンジについて説明させていただきます。
<賃貸物件の税申告>
Schedule Eで家賃から必要経費を差し引いた純利益が課税対象となります。この純利益を給与や利子・配当などの全ての所得と合算して課税対象となる所得が計算されます。純損失の場合はほかの所得との損益通算に制限があります。
<認められる必要経費>
修繕費、管理費、維持費、共益費、保険料、固定資産税、コミッション、支払利子、減価償却費等
<注意>
減価償却の計算
賃貸物件の取得費から減価償却対象外である土地に該当する部分を差し引く
鉄筋、木造、新築、中古に関係なく所得時からの計算
米国外に賃貸物件を所有している場合も同様にSchedule Eにて申告します。
米国外の賃貸物件の耐用年数は30年、米国内物件の減価償却の耐用年数は27.5年、それぞれ定額法での計算となりますのでご注意ください。
<純損失の場合>
$25,000までの純損失の損益通算が認められるためには積極的に賃貸活動に関与している必要あり
例えば管理会社が間に入っていても、テナントの募集や交渉、修理の手配など常にマネージメントの決定権を持って関与していること
純損失は他の物件の純利益と相殺ができ、資産の売却時に控除も可能
高額所得者は受動的損失の損益通算には制限を受ける
繰り延べの制限はなく、他の種類の受動的利益との相殺ができる
<1031 Exchange>
投資用不動産売却時に得た売却益を同種の別の不動産に再投資すればキャピタルゲイン税を繰り延べできる税制優遇措置です。
条件として;
ビジネスを運営目的で使用される不動産または投資目的の保有不動産
売却する物件と購入する物件は同種(Like-kind exchange rule)の不動産、かつより良い条件の物件
但し、売却時には売買契約書に 1031 Exchangeを行う旨を開示する必要があるため1031 Exchangeを取り扱うエスクローに依頼する必要があります。
<時間制限(認定期間)>
売却してから45日以内に、買換物件リストを提出
購入完了期限は、売却が完了してから180日以内
この時間制限は厳密で1日でも過ぎたら認定されません。
この制度には、回数制限などありません。死ぬまで繰り延べ資産を増やした場合でも、死亡した際に繰り延べた税金を支払う必要はありません。死亡時に相続人が不動産を受け継ぐ場合には死亡時の時価が取得価額(Stepped-up basis rule)となるので最後に購入した物件について遺産税がかかるのみです。
その遺産税も2025年度の生涯非課税枠(Unified credit)は13,990,000と高額ですので米国での資産形成に利用されている方が多いのも理解できます。
参照:https://www.irs.gov/uac/like-kind-exchanges-under-irc-code-section-1031
以上
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