チップと残業に税金はかかりません

CDH会計事務所
米国公認会計士
武藤 登

以下は、2025年7月4日に”Public Law 119-21”として成立した「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」の新たな控除の条項に対するIRSによる説明です。これらの条項は2025年から施行されます。

<チップへの課税なし>

2025年から2028年まで有効で、従業員および自営業者は、IRS(内国歳入庁)が2024年12月31日以前に慣習的かつ定期的にチップを受け取っていると記載している職業において、かつ、Form W-2、Form 1099、または個人に提出されたその他の指定された申告書、もしくは個人がForm 4137に直接報告した書類で報告された適格チップを控除できます。

  • 「適格チップ」とは顧客から、またはチップの共有を通じて自発的に受け取った現金またはカード支払いによるチップ

  • 年間控除の上限は25,000ドル

  • 自営業者の場合の控除額は、チップを受け取った事業または事業からの個人の純所得(この控除額を考慮せずに)を超えてはらない

  • 修正調整総所得が15万ドル(夫婦合算申告の場合は30万ドル)を超える納税者については、控除が段階的に廃止

納税者の資格:控除は、項目別申告を行う納税者と項目別申告を行わない納税者の両方に適用されます。

<注意>

第199A条に基づく特定サービス業(Specified Service Trade or Business: SSTB)に従事する自営業者は控除の対象外です。また、雇用主がSSTBに該当する従業員も控除の対象外です。

納税者は控除を受けるために、申告書に社会保障番号を記載し、結婚している場合は共同申告する必要があります。

<雇用者サイド>

雇用主およびその他の支払者は、IRS(またはSSA)に情報申告書を提出し、受け取った特定の現金チップとチップ受取人の職業を示す明細書を納税者に提出する必要があります。

<IRSからのガイダンス>

IRS(内国歳入庁)は、2024年12月31日までに「慣習的かつ定期的に」チップを受け取っていた職業のリストを、2025年10月2日までに公表します。

IRSは控除を請求する納税者、および新しい報告要件の対象となる雇用主と支払者に対し、2025年度の移行措置を提供します。 

<残業への課税なし>

2025年から2028年まで、適格残業手当を受け取る個人は、公正労働基準法(FLSA)で義務付けられ、Form W-2、Form 1099、または個人に提出されるその他の指定された申告書で報告された、通常の賃金率を超える給与(「時間外手当」の「半分」部分など)を控除できます。

  • 年間控除額の上限は12,500ドル(夫婦合算申告者の場合は25,000ドル)

  • 修正調整総所得が15万ドル(夫婦合算申告の場合は30万ドル)を超える納税者については、控除が段階的に廃止される

納税者の資格:控除は、項目別申告納税者と非項目別申告納税者の両方に適用されます。

<注意>

納税者は、控除を請求するために、申告書に社会保障番号を記載し、結婚している場合は夫婦合算申告する必要があります。

<雇用者サイドの報告>

雇用主およびその他の支払者は、IRS(または社会保障局)に情報申告書を提出し、年間に支払われた適格残業手当の総額を示す明細書を納税者に提出する必要があります。

<IRSからのガイダンス>

IRSは、控除を請求する納税者と、新しい報告要件の対象となる雇用主およびその他の支払者に対して、2025年度の移行措置を提供します。

<自動車ローンの利子は非課税>

IRSのファクトシートは7月25日に更新され、「自動車ローンの利子は非課税」のセクションに「米国内での最終組立」の要件を説明する新しい文言が追加されました。

  • 2025年から2028年まで有効。

  • 個人は、対象車両の購入に使用したローンの利子を控除できる

  • ただし、その車両が個人使用目的で購入され、その他の適格基準を満たしている場合に限る(リースの支払いは対象外)

  • 年間控除の上限は10,000ドル

  • 修正調整後総所得が100,000ドルを超える納税者(夫婦合算申告者の場合は200,000ドルを超える納税者)については、控除は段階的に廃止

<対象となる利子>

控除の対象となるには、以下の条件を満たすローンの利子を支払う必要があります。

  • 2024年12月31日以降に発生したローンであること

  • 納税者が当初の使用を開始した車両の購入に使用されたローンであること(中古車は対象外)

  • 個人使用車両(事業用または商業用ではない)であること

  • 車両に担保権が設定されているローンであること

  • 対象となる自動車ローンを後日借り換えた場合、借り換え後の金額に対する支払利息は通常、控除の対象となる

<対象車両>

対象車両とは、車両総重量(GVW)が14,000ポンド(約6,000kg)未満の乗用車、ミニバン、バン、SUV、ピックアップトラック、またはオートバイで、米国で最終組立が行われた車両を指します。

<米国での最終組立>

最終組立の場所はディーラーの敷地内で各車両に貼付されている車両情報ラベルに記載されています。また、納税者は車両識別番号(VIN)に記載されている製造工場に基づいて、車両が米国で最終組立が行われたかどうかを判断することもできます。米国道路交通安全局(NHTSA)のVINデコーダーウェブサイトでは、製造工場に関する情報を提供しています。

参照:https://www.irs.gov/newsroom/one-big-beautiful-bill-act-tax-deductions-for-working-americans-and-seniors

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