債権者が失ったのは1万5,000ドルだけではありません。5年という貴重な時間も失ってしまったのです。

皆さん、こんにちは。

ヘクターです。

いつもたくさんのメールをいただき、本当にありがとうございます。皆さんが日々直面している与信管理や債権回収に関するさまざまなご相談に対し、私なりの考えをお伝えできることを大変うれしく思っています。

先日、ある債権回収会社のコレクターから、一見するとごく普通の回収案件について相談を受けました。

依頼主は、日本企業の子会社で、高精度工業用ドリルを製造・販売しているメーカーです。回収を依頼された債権額は約1万5,000ドル。取引先は工業製品の販売会社で、何度も「支払います」と約束しながらも支払いは行われず、最も古い請求書は2021年5月までさかのぼっていました。

債権者は2025年11月になってようやく商品の出荷を停止し、その半年後の2026年5月になって初めて債権回収会社へ依頼しました。

この会社の従業員はわずか2名。与信管理と債権回収を担当していたマネージャーは英語があまり得意ではなく、「支払いが遅れている顧客に対して強く対応することが苦手です」と率直に話していました。

ところが、コレクターが調査を進める中で、この案件の見方を大きく変える事実が判明しました。

メーカーから直接商品を購入できなくなった債務者は、その後も同じ商品を債権者の別の販売代理店3社から購入し続けていたのです。

しかし残念ながら、その3社も信用取引を認めた結果、同じように支払い遅延に悩まされました。

各社とも約60~90日間の延滞を経て取引を停止し、それぞれ訴訟を提起。そして3社すべてが勝訴し、判決を取得していました。

この情報を聞いたマネージャーは大変驚きました。

「うちの商品を買い続けていただけでなく、うちの代理店まで同じように踏み倒されていたとは……。」

そしてすぐにこう質問しました。

「私たちも4件目の訴訟を起こすべきでしょうか。」

私の答えは、少し意外だったようです。

私の考えでは、この案件が回収会社へ持ち込まれた時点で、

訴訟そのものは、もはや最大の問題ではありませんでした。

本当の問題は、

債権者が失ったのは1万5,000ドルだけではなく、5年間という非常に貴重な回収の時間だった

ということです。

言い換えれば、

5年間、判断を先送りにしたこと。

5年間、「入金」ではなく「支払います」という約束を信じ続けたこと。

そして、すでに支払い能力に問題があることを示していた取引先へ、無担保で信用供与を続けてしまったことです。

訴訟を検討するより、はるか以前から危険信号は点滅し続けていました。

私が債権者へお伝えした3つの失敗

失敗① 販売を止めるタイミングが遅すぎた

最も古い請求書は、回収を依頼した時点ですでに5年も経過していました。

商品を出荷するたびに、会社が負う信用リスクはさらに大きくなります。

ある時点から、この会社は商品を販売していたのではなく、

無担保でお金を貸している状態

になっていました。

サプライヤーにとって最も重要な判断の一つは、

「いつ出荷を止めるか」

を見極めることです。

失敗② 与信条件が「守らなくてもよい約束」になっていた

与信条件は、継続して運用して初めて意味があります。

支払いが遅れても何の影響もないと顧客が感じれば、

Net30は自然とNet60になり、

やがてNet90となり、

そのうち数か月、さらには数年という延滞へ発展してしまいます。

企業は当然、自社の資金繰りを最優先します。

だからこそ、

自社のキャッシュフローは、自社で守らなければならないのです。

失敗③ 与信管理体制と担当者への教育が不足していた

与信管理を担当していたマネージャーは、

決して怠けていたわけでも、無責任だったわけでもありません。

不足していたのは、

難しい回収案件へ対応するための

知識、経験、そして自信でした。

多くの中小企業では、

営業研修には多くの時間と費用をかける一方で、

与信管理や債権回収の教育にはほとんど投資していません。

しかし、

実践的な回収トレーニングと明確な与信管理方針があれば、

小さな問題が大きな損失へ発展する前に、

適切な判断を下せるようになります。

では、訴訟を勧めるか?

おそらく勧めるでしょう。

しかし、すでに複数の判決債権が存在していることを考えると、

実際に回収できる可能性は決して高くありません。

しかし、

今回お伝えしたかった教訓はそこではありません。

訴訟が必要になる頃には、その問題を防ぐチャンスは何十回も過ぎ去っているということです。

効果的な与信管理は、

債権回収会社や弁護士へ依頼した時に始まるものではありません。

顧客が最初の支払約束を守らなかった、その瞬間から始まるのです。

最後に、私がいつもお伝えしている言葉をご紹介します。

最高の回収電話とは、そもそもかける必要がない電話なのです。

ヘクター

記事の無断転載を禁じます。

———————————————

「ヘクター・ザ・コレクター」は、CMI Credit Mediators Inc. 社長 ナンシー・セイバードがお届けする、与信管理・債権回収・人事に関するアドバイスコラムです。皆さまからのご意見・ご感想を心よりお待ちしております。(nseiverd@cmiweb.com)

Nancy Seiverd
President & CEO
CMI Credit Mediators Inc.
Office: 1-800-456-3328 ext 207
nseiverd@cmiweb.com‍ ‍https://cmiweb.com/

Previous
Previous

「9時から5時」を見直す時では?

Next
Next

なぜ駐在員規程が重要なのか