日米における障害者雇用環境の違い

Pacific Dreams, Inc.
President & CEO
Ken Sakai(酒井 謙吉)

皆様の多くはご存じのことではないかと存じますが、日本ではこの7月1日から、障害者の法定雇用率が、障害者雇用促進法改正に基づき、従来の2.5%から2.7%に引き上げられました。対象となるのは、従業員数が常時37名以上いる日本の民間企業で、しかも企業の単なる努力目標を掲げただけの法令改正ではなく、雇用率未達の場合にはペナルティ(障害者雇用納付金)の支払いも企業に課されます。逆に達成した企業に対しては、報奨金や助成金が国からその納付金の中から支払われるというアメとムチのスキームとなっています。

そういった日本での法改正がこの夏あった関係なのか、弊社の日系クライアント企業様からも、アメリカでの障害者雇用義務に関するお問い合わせが最近弊社にもいくつか届きました。結論から申し上げますと、アメリカにはいまのところ、連邦ならびに州レベルにおきましても日本のような障害者雇用促進法にあたる法律は存在しません。あるのは、ADA (Americans with Disabilities Act; アメリカ人障害者法)という連邦法です。また、各州にはADAに相当する障害者差別禁止が州雇用差別禁止法の中で設けられています。ですので、アメリカでは企業に障害者を雇用しなければならないとするような義務を課した法律はないですし、ましてや障害者の法定雇用率の設定などもいっさいありません。

では、日本の障害者雇用促進法のような法律が存在しないアメリカでは、障害者の雇用促進はどのような形で進められているのか、皆様は疑問を抱かれるところがおありではないでしょうか。それは、もとを正して言えば、障害者に対する基本的な考え方が日米では大きく異なるという点に集約されるのではないかと私は考えています。日本では、障害者は国や社会が守っていかなければならない存在だと考えているフシがあり、一方のアメリカでは障害者も健常者と特に変わる存在ではなく、制約があることは認めながらもできることに関しては健常者と同様に差別なく職場で一緒に働いてもらうというのが根本にあります。ですので、障害があることを雇用上での差別にしてはならないというのがアメリカの重要な考え方で、法定雇用率を設けてまで障害者を雇えという掛け声にはならないわけです。

確かに雇用義務を数字で設けていないアメリカでの障害者雇用は、実際にどのように進んでいるのかというと、そこはやはり心もとないところがあると察しています。障害者を積極的に雇用している企業として名前がときどき挙がるのはSAP、HP(Hewlett Packard)、そしてEY(Earnst & Young)ぐらいで、これらは皆誰もが知る大企業ばかりですが、恐らく各州にある名前の知られていない中小企業やコーヒーショップなどももちろん積極的に障害者を雇用しているところは数多くあるはずです。ですが、日常的にはそれらの企業が特にスポットライトを浴びるということはアメリカではとても少ないように感じます。

日本と違って、障害者を雇用したからといって、報奨金や助成金がもらえるわけでもなく、ただ障害者に差別をした場合に関しては、アメリカでは訴訟という単なるペナルティ以上のかなりの手痛いしっぺ返しが待っているかもしれないということは申し上げられます。障害者を雇用している大手企業では、品質管理やサイバーセキュリティ、そしてコーディングチェックやデータ分析などの特定の分野にとりわけ優れた才能を見出しているといいます。これら企業で働く障害者は主に神経多様性(ニューロダイバーシティ)と呼ばれる自閉スペクトラム症やダウン症、読み書き障害(ディスレクシア)を含む人々なのですが、通常の人では見逃してしまうような異常を見つける能力に秀でていると結論付けています。

障害者を積極的に雇用している前述の大手企業で働く一般の従業員の多くが、職場で他の従業員に対しても優しく接するようになり、会社へのエンゲージメントが高まり、自社の職場環境に誇りを抱き、求職活動中の人たちからも魅力的な職場に映るということが分かっています。その意味では、法律上において障害者に対する差別は許されないからとか、社会の大義名分のために障害者を雇用するのは尊く意義のあることだとか、そういった部分だけではなく、障害者雇用は実は企業にとっても現実的なメリットがあるのだということに気付かされます。

アメリカでは、STEM(科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学)の学士号や修士号を持ちながら、障害者だということだけで、ピザなどのフードデリバリーやライドシェアの運転手をしている人たちが巷に溢れているといいます。彼らは立派な学歴を持っているにもかかわらず、社会では高卒ないしは高校中退者程度にしか見なされておらず、就職もままなりません。AIが猛威をふるう時代にあってもまだ当面人材不足は十分解消されているわけではありません。どちらかというと、採用面では後塵を拝することのある日系企業としては障害者の採用や雇用という可能性もあることを認識し、障害者の持つポテンシャルに目を開いてみることも十分ありなシナリオなのではないかと考える次第です。

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Pacific Dreams, Inc. は日系企業様のためのHR(人事労務管理)サービスを提供しているコンサルティング会社です。コンサルティングは日本語ならびに英語でご提供しています。全米に100社以上の日系クライアント企業様がおります。コンサルタントとあわせて、従業員採用時のバックグランドチェックやドラッグテスト、また地域、業種、ポジション別での給与調査サービスもご提供しています。ハンドブックやジョブディスクリプション、各種人事レターの作成も行います。各州の法律に準拠したセクハラ防止トレーニング、管理職向けのマネジメントトレーニングをオンラインで毎月実施しています。初回60分までの無料オンライン面談を受け付けておりますので、私のメールアドレス(kenfsakai@pacificdreams.org)までご一報くださいましたら幸甚です。

Ken Sakai(酒井 謙吉)
President & CEO
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Office: 503-783-1390   Cell: 503-910-3506
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