リモートワークの「既得権」は、あなたの仕事をAIに差し出すのか?— 雇用主と候補者が直面する戦略的ジレンマ
パシフィック・アドバイザリー・サービス
代表取締役社長
武本 粧紀子
コロナ禍で普及したリモート・ハイブリッドワークは、今や従業員側にとって「既得権」となりつつあります 。
しかし、多くの雇用主はオフィス勤務に戻す動き、または通勤を前提とした雇用を増やしています 。
弊社に来られる候補者の方々も、「現在の雇用主が通勤に戻しているから転職を考えている」という声や、「リモート・ハイブリッドワークのポジション」を探しているという要望が多い現状があります 。現に90%以上の方は少なくも一週間に数日はリモート勤務ができるお仕事を探していらっしゃいます。95%以上の求職者は、リモート・ハイブリッドワークを探している、という調査すらあります。(参考文献:”How employees feel about remote work”, U.S. Career Institute, April 2024)
一方で、AIの時代が到来し、特にエントリーレベルの仕事を中心にAIの導入が進んでいます 。アメリカの高い学費を払い、頑張って勉強をして、学士号を取得した方々が仕事を探すのに苦労しています。数年前まで引く手数多だったIT専攻の新卒の方ですら、就職難に直面しています 。IT専攻の新卒の学生さんが最初にやられていた仕事は、AIで代替しやすい仕事ですし、別の専攻の学生さんでも、データーエントリーはもちろんのこと、簡単なカスタマーサービス、果ては、デザイン画を描くことですら、AIにやらせることは可能です。(参考文献:”College graduates struggle to navigate job market with the rise of AI”, CBS News, September 18, 2025)
ここで大きな問題が生じます。「リモート・ハイブリッドワーク」で成立しやすいポジションは、往々にしてAIによって仕事が成り立つポジションが多いのです 。つまり、業務プロセスが標準化・明確化されやすいリモート環境での仕事は、AIによる代替がしやすい構造を持っています 。
現時点では直ちにAIに取られる心配はないかもしれませんが、せっかく転職までして働きはじめた、リモート・ハイブリッドワークが可能なポジションは数年後にはAIに代替される可能性があります。
これが、「リモートワークの柔軟性」と「AIによる代替リスク」の戦略的なジレンマです 。
一方、現在、米国も日本も人手不足の売り手市場が続いています 。
雇用主は、この人手不足の状況をAI導入の追い風として捉え、積極的に導入を進めていくべきでしょう 。
具体的には、AIに代替される可能性のあるタスクを特定し、自動化を進める一方で、従業員にはAIを使いこなすための教育(リスキリング)を提供することで、組織全体の生産性を向上させることが重要です。AIを導入すれば、従業員に支払うお給料やベネフィットに使っている費用も節約できます。人間とは違い、働く時間制限もありませんし、夜間、休日勤務も可能です。
事実、AIを導入することで、米国の企業だけで一年間に9200 億ドル(920 Billion Dollars – 2025年10月のレートで139兆円以上)、他のコストも入れると、米国で一年間約1兆ドル(One Trillion Dollars – 2025年10月のレートで約150兆円)節約になる、という研究もあります。(参考文献:“AI could save firms nearly $1 trillion a year, study finds”, AXIOS, August 19, 2025)
働く人たちが、リモートワークの柔軟性を求めることは当然の権利ですが、その裏側にある「自分の仕事がAIにとって代わられる」という危機感を持つべきです 。せっかく転職までしてハイブリッド・リモートワークが可能な仕事を見つけても、数年後にそのポジションがAIにとって代わられてしまえば、またその時点でお仕事をさがさなくてはなりません。
皆様がAIの使い方を学び、スキルアップすることはもちろん必須です 。しかし、それだけではなく、今こそ、「AIに取って代わられない分野は何か」「自分はどうやってそのスキルを取得できるか」を真剣に考える時期が来ています 。
弊社は、この過渡期において、雇用主様には「AI時代に本当に必要な人材像」をご提案し、候補者様には「AIに負けないスキルとキャリアパス」を見つけるサポートをいたします。
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35年以上、PASは雇用主さまのバイリンガル・バイリンガル以外の人材探し、候補者さまのお仕事探し、人事コンサルティングを日系企業さまや個人事業主さまの為に行ってきました。シカゴとシカゴ郊外はもちろん、中西部のお客様のニーズにもお答えしてきました。
NEW! バイリンガル・シニア・ロジスティック・マネージャー:イリノイ州ウッドデール勤務。
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